第4話孫連託

ワシの名前は孫連託そん、れんたく

ここ中国の農村で静かに暮らす老人である。

この国では一人っ子政策というものがあり子供を沢山作るという事は罪と、とられてしまう。

じゃが…子というのは可愛いもので、もうワシには孫までおるのだ。

そんなワシはここのとある村の村長をしている。

大昔からこの村で生まれこの村で育ってきたワシにとってこの村での生活が全てなのだ。

そしてワシには七人の子供に恵まれたのじゃがほとんどの息子娘達はやはりというかこの村を出ていってしまったのだ。

そして残されたのは末娘の『零鈴れいりん』孫はたったの一人。

零鈴の夫はというとこの村から大分前に他所に女を作り出ていってしまったのだ。

故にワシ、そして娘の『零鈴』更に一人の目に入れても痛くない孫娘『凛々りんりん』三人でこの村で暮らしておったのじゃ。

今日も今日とて孫娘とワシは散歩に出る。

「おじいちゃん!今日はどこまで行くの?」

「ああ!そうじゃな!山のてっぺんの畑にでも行こうかの?」

「わーい!楽しみ!お弁当ある?」

「弁当はおにぎりを二つ!凛々とワシのぶんじゃな!」

「良かった!じゃあ行こうおじいちゃん!」

こうしてワシと孫娘『凛々』はこの日、山の畑へと出かけたのじゃ。

それがワシに起こった悲劇の始まりだとはこの時はまだ知る由もなかった。

山の畑と言ってもワシらの村からは大分離れていて片道大人の足でも一時間ほどかかる為ワシらの足だと片道二時間見ていればつくはずじゃ。

ワシにとってはいつもこうして孫娘凛々と二人で山に行くのは楽しみであった。

「おじいちゃん!疲れたよ〜!」

「もう疲れたのか?凛々?」

「うん!おんぶ〜!!」

「ははっ!仕方ないのぉ。」

こうしてワシは孫娘をおんぶすると山道をゆっくり歩いていく。

こうしてる時間もワシにとっては平和で幸せな時間なのだ。

凛々は嬉しそうにワシの背中できゃっきゃと騒いでいる。

(こんな時間でも…ワシは幸せじゃな。)

ワシは背負っている孫娘といる事に幸せを感じていたのじゃ。

「あ!おじいちゃん!見てみて!」

突然背中にいた孫娘が空を指さし叫ぶ。

ところがワシにはそれが眩しくて見えない。

「おお…見えんのぉ。」

「そうなの?私には赤く綺麗な星みたいの見えるよ!」

ワシの背中で何かを見た孫娘が話しかけてはきたが全く見えない。

するとワシらの目的地の畑に辿り着く。

「さぁ!凛々!畑に着いたからの!ワシはちょっと休憩したら仕事を始めるぞ!」

「……………。」

ワシはそこでやっと凛々の変化に気づく。

「凛々?どうした?」

ワシは凛々の身体をゆっくり背中から降ろすと様子を見る。

すると凛々の身体が震え出す。

ぶるぶるっ!!

「凛々?凛々!!??どうしたのじゃ?」

身体を震わせたがその後はグッタリしてしまう凛々。

ワシは凛々の額に手をおいてみる。

凛々はどうやら熱があるようだ。

「凛々!!待ってろ!?」

再び凛々を背負い下山を決める。

そしてワシは急ぎ足で山を降り始める。

畑までは来たものの今はそれどころでは無い。

道は下り坂だがワシは急ぐ。

時折足は滑るが今はそれどころでは無いのだ。

孫娘の…緊急事態だ。

辺りの木々は少なくこの道は楽なのだ。

但し時間は多少かかる。

「くっ!これは近道を行くか!!?」

ワシの頭の中にふと思い浮かんだのはこの山の近道。

だがここは一歩間違えたらワシも凛々も一巻の終わり。

という断崖絶壁の近くの道。

整備もしてないこの道はこれまでも何人もの村人が足を滑らせ転落。

そして亡くなってきた場所だ。

ワシは走る。

孫娘の苦しみはワシの背中に十分過ぎるほど感じてしまう。

その時。

「お…おじいちゃん…私…もうダメかも……お腹とかも色んなとこが痛くなって…きたの。」

「凛々!?待ってろよ!おじいちゃんが必ず助けるからな!」

「ううん!私をおいて!おじいちゃんは生きて…帰って……。はぁはぁ。」

「凛々!?待ってろ!?もう少し!待ってろ!!」

ワシの目から涙も溢れてくる。

凛々を背負いワシは死にものぐるいで山を降りていく。

それからのワシはもう何も考えられなくなっていた。

「はぁ…はぁ……。」

あれからどれくらいの時間が経ったのか。

そしてワシは……家に着きそのまま倒れてしまった。

気がつくとワシを医者が診察をしておるようじゃ。

するとワシの耳に娘の泣いてる声が聞こえてくる。

「うう……ううううぅぅぅぅ。うわぁぁぁーーーーっ!!」

ワシの目にうつったのは我が子…ぐったりしている凛々を抱きしめ泣きじゃくる娘の零鈴。

(そんな…凛々!!凛々ーーーーーっ!!)

ワシは声も出せず心で涙したのだ。

その時。

ワシの身体にも強烈な痛みが全身に走る。

「うがぁぁぁっ!!んぐっ!!」

全身を何かに食われている様な強烈な痛みが走り声は叫び声しか出てこなくなる。

「父さん!!??父さんまで!!??」

「いやぁぁぁーーーーーーーーーー!!??」

娘…零鈴の声が耳に届く。

じゃが…ワシはそのまま…。

意識を失った。

だが…この三日後。

一人残された凛々の母親…零鈴も……謎のこの奇病が発症し。

亡くなった。

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