第2話ベン・バラック
いつしか世界で話題になっているウイルス感染症『オーガプレデタウイルス感染症』
文字通り細胞の欠片までをもウイルスに食われてしまい、そしてその痛みも言葉にならない程の強烈な痛みを伴うこのウイルス感染症。
これからの話はこのウイルス感染症にかかってしまった一人の犯罪者の話である。
◇
俺の名はベン・バラック。
生まれたのはスラム街。
そして貧しい家庭に生まれ育った。
そんな俺は、やはりというか、これまでまともな生き方はしてこなかった。
窃盗、障害、詐欺や強盗まであらゆる犯罪に手を染めてきたのだ。
そして俺は刑務所とシャバを行き来する。
俺は世界を恨み、国を、自分の生い立ちをも呪って生きてきた。
いや…言ってしまったら俺は自分の生い立ちを恨みながらそれを理由にやりたい放題の生活をしてきたと言っていいだろうな。
そんな俺は今生涯何度目の独房入りなのだろう。
まあそんな事はとうに忘れていた。
そういや。
俺はこれまでの犯してきた罪を何故かこの時、振り返る。
初めは…十五の時か。
俺は一人腹が減り…そして街のいい匂いのするレストランに立ち寄った。
メニューを片っ端から注文し俺は食い終わるとトイレに直行。
トイレの窓ガラスを割り、そこから逃亡。
そしてなんなく捕まり刑務所へ。
これは俺が初めておこした事件だ。
そしてすぐに刑務所から出てきた俺は今度は店に並んでるものを取っては逃げ。
万引きを繰り返しては補導。
そしてあまりにも再犯率が高いという事からまたもや刑務所へ。
十代の頃はそんな事を繰り返していたな。
モテなかった俺は二十歳になると性欲に目覚める。
街で出会う女出会う女片っ端から声をかけては性行為を繰り返す。
ところがそれも徐々に普通では飽きてくる。
するとより快楽を求めた俺はS行為に目覚める。
嫌がる女を無理やり犯しては犯行を繰り返すと次第に俺の悪い噂は街中に知れてしまう。
だが女欲は消えない。ならばと金を使って性欲をはたそうとした時に優位になるよう金にも執着を始める。その為の金欲も湧いてくる。
そして強盗。強姦と俺は次々と犯罪に手を染めていく。
そして俺は遂に殺人を犯してしまう。
初めは騒ぐ女の首を絞めた時。
俺は興奮と快楽で我を忘れる。
気がついた時には女は動かなくなっていた。
そうそう金は見知らぬ金持ちの家に忍び込んで金品を盗み騒ぐ女がいれば強姦。俺は好き放題やったっけな。
そんな行為を繰り返して今があるのだが後悔などしてないんだ。
何度目かのムショ入りを繰り返しいつ出れるか分からない罪を背負っている。
「ああ…思えば好きに生きてきたんだ、楽しかったと言えば楽しかったのか。だが…また満たされてはないな…もっと…そうもっと俺は。」
俺はふと独房から空を眺める。
「星…か……。」
すると星は眩い赤い光を放つ。
「ううっ!!??なんだ!今の光は__。」
一瞬目がくらみ視界が消える。
俺は星の光が何なのか気になったのだが。
少し時間が経つと目の眩しさは消えていったんだ。
徐々に我に返っていく俺。
「俺は不思議な光を浴びちまったのか…目がチカチカするがまあ自然に治るだろ。」
そして翌日。
目覚めた俺は身体に違和感を感じる。
「なんだ_これは?」
起きようとしても身体が思うように動かなかったのだ。
俺がこの不思議な出来事に考えを巡らせているとやがて看守がやってくる。
「149番!朝食の時間だ…出ろ。」
これはいつもの俺の朝食時に必ずくる行事だ。
番号で呼ばれるのは当然だが…今回はこれに加え朝食に向かう際ずっと監視され続けるのだ。
ところが…。
俺は起きようにも身体が全く動かない。
「ああ……ううぅぅ。」
「ん?」
俺の身体は発熱しているようで倦怠感で身体がダルく起き上がれない。
ボーッとしている俺に再び看守からの声が聞こえてくる。
「149番!聞こえてるのか!?食事の時間だ。」
「あぅ…あ……う……あ。」
俺の口には力が入らず出せる声も限られてしまう。
(おかしい…これはおかしいぞ……俺の身体に一体何が起きてるんだ?)
「149番!?」
看守は俺の顔を覗き込む。
「うわぁぁぁっ!?なんだコイツは!?」
俺は自分の身体がどうなってるのか分からなかった。
すると次の瞬間…全身に痛みが走る!!!
「うぎゃぁぁぁぁああああーーーーーっ!!」
俺の身体に突然湧いたように何かに噛みつかれたような痛みが走る!!!
「どうした!?149番!!??」
看守は俺に声をかけてくる。
初めは足!そして腕!腹部と次々とまるでワニやトラ!いや…表現とするならまるで鬼!!!に全身を食われているような感覚と激痛が襲う!!!
身体中の強烈な痛みが俺を襲う!!!
「うわぁぁぁーーーーっ!!!ああーーーっ!!!!」
俺は悶え苦しむも看守はどうしたらいいのか分からず狼狽える。
そして意を決したかのように中に入ってきて俺の姿を見た看守。
その表情は恐ろしい何かを見たかの様な顔をしていたのだ。
「う!うわぁぁぁーーーーーーーっ!!??」
ドンッ!!!
慌てた看守は壁にぶつかりそして床に鏡が落ちる。
俺から逃げるように出ていく看守。
偶然にも俺の目に落ちて割れた鏡の中が見えていた。
俺はその鏡を目を凝らし見ると………。
俺の顔は皮膚が剥がれ落ち…中の肉が何かに喰われたように所々の肉は消え落ちていた。
その姿は。
まるで地獄絵図だった。
(これは!?やばい!なんだこれは!?)
俺は急に恐ろしさを感じる!!
死にたくない!!
と…ここへきて懇願する。
(嫌だ!!まだ沢山の女とやりたい!)
(まだまだ美味い酒と美味い物を食って好き勝手に生きたい!!)
(まさか…これは神の俺への制裁なのか!?)
(んな事あってたまるか!!??)
(俺は生きて!生きて!これからも生きていくんだ!!)
(ムショを出たらまず………)
「うぎゃぁぁぁぁああああっ!!!!!」
突然また全身を強烈な痛みが襲う!!!
「ぁぁぁぁぁぁ……__。」
(俺はこのまま…死ぬ…のか?)
(いやだ!!まだまだ俺はやりたい事をやって生きてやるんだ!!??)
この時、俺は既に身体の激痛は感じなくなっていた。
(…………………………………………………………………………。)
俺はそのまま何も考えれず…何も声にも出来ず。
意識は消えたのだった。
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