世界は感染している。でもその事は誰も知らない、何故なら皆それを伝えられずに消滅してしまうから。

黒羽冥

第1話恐怖の始まり。

世界は感染している。

何故こうなった?

俺はただ…いつもと同じ生活を送っていただけなのに。

とある青年の話。

彼は、とある企業に就職し毎日充実した日々を過ごしていた。

「あ!マイク!今週の休みは予定通りで大丈夫?」

僕の名前はマイク、恋人の『レベッカ』と週末のデートの話をしている所だ。

「ああ!もちろんだよ!」

「マイク!行く場所の『魔石資料館』の情報は何か分かった?」

「ああ…それが仕事が忙しくてまだなんだよ!」

「そうなの?でも『魔石資料館』には私絶対行きたいのよね!」

「ああ!僕も絶対いきたいさ!」

「そうよね!なんて言ったって世界が注目している一大イベントみたいなものですものね!」

「そうだよね!」

僕は恋人の『レベッカ』とこんな会話をしていたんだ。

ところが。

突然の仕事で僕は当日どうしても行きたかったイベントに行く事が出来なかったんだ。

そしてその日の夜。

プルル。

ガチャッ。

僕の携帯がなり電話に出ると『レベッカ』からの電話だった。

「あ!マイク!?今日は本当に凄かったわよ________。」

彼女は終始イベントの話を興奮混じりに話してくれたのだ。

「それは良かったね!本当に僕も行きたかったよ?」

「そうね!滅多にない機会だったから次って言われたら中々機会が来るか分からないけどくるといいわね?」

「そうだね!そういえば一番のメインイベントの『魔石』は見れたの?」

「ええ、もちろんよ!あの石、『オーガストーン』は本当にもう言葉にならないくらいの美しさで一度見たら忘れられないって感じだったわ。」

「そうかぁ…太古の魔法の石って呼ばれる『オーガストーン』だもんね?僕も見たかったな。」

「本当に!アレはマイクにも是非見て欲しかったわ…あ!石カメラはオッケーだったから写真は撮ってきたから後でメールで送っておくわね!」

「ほんとかい?ありがとう『レベッカ』!」

「いやぁ!楽しみだな!」

「あ!マイク!じゃあ私電話が入ったからきるわ!」

「分かった!じゃあ後はゆっくり休んで!メール待ってるね!」

「ええ!じゃあおやすみなさい!」

ガチャ。

こうして僕は電話を終え一息つくと『レベッカ』からメールが送られてくる。

僕はメールを開くと画像が添付されている。

そこには綺麗な赤い光を放つ石が映っていたのだ。

「うわ!これが『オーガストーン』か…凄く綺麗で吸い込まれそうな赤い光の石だな。」

僕はこの時…この石の赤い光が世界を揺るがす禍々しい光だとまだ知る由もなかったんだ。

それから一週間後の事だった。

突然僕のスマホにとある病院から電話が入る。

「はい!マイクと言いますが…。」

「あ!『レベッカ』さんをご存知でしょうか?」

「はい!もちろん『レベッカ』は僕の恋人でずっとお付き合いしてるんです。」

「そうですか…大変申し上げにくい話なのですが…」

僕はその言葉に嫌な予感がしてくる。

「はい…どう言った事でしょうか?」

「実は彼女…とある病気に感染してまして。」

「えっ?」

僕はその言葉に衝撃を受け思わず聞き返しそうになる。

「彼女の感染した病気なのですが…最近になって発見された感染症で名は『オーガプレデタリスク』と言います…学会で発表されたばかりのこの感染症なのですが。」

彼女が聞いた事もない病気にかかった?

しかもその病気は世界ですらまだ何も分かっていないらしい。

僕は更に問うてみる。

「その病気ってかかるとどうなるのですか?」

「今もどうなるか…彼女の様態は今大変危険な状態で予断を許さないのです!ですのでこの電話をかけた次第です。」

「そうですか。僕はそちらに面会には行けますか?」

「いえ…こちらに来ても彼女のこの病気に貴方が感染してしまう危険性もありますので見るだけでしたら。」

ガチャッ。

僕は電話をきり彼女の入院した病院へと急いだんだ。

僕の家は郊外にあるが彼女の家はこの街の中にあった。

だからその大きな病院は分かりやすい場所にはあったんだ。

僕は病院内に入ると感染症病棟へと足を向ける。

そして看護士に彼女の部屋を聞きつけその場所を目指す。

流石は隔離病棟…ほとんど看護士や病院内の限られた人達しかいない病棟だ。

「えっと…501…501っと。」

僕は五階の隅にある部屋に辿り着く。

完全なる個室のその部屋は人は中々行かないのだと思う。

そして部屋の入り口に辿り着くと中から誰かの声が聞こえる。

「レベッカ!?しっかりしろ!!」

「レベッカ!レベッカ!?」

えっ!?

僕は思わず耳を疑い部屋のドアを開ける。

するとそこには先程まで息をしていたであろう彼女の亡骸がそこにあったんだ。

「レベッカ……。そんな。」

僕はあっけに取られ動けなくなった。

でも次の瞬間。僕は彼女の亡骸を抱きしめていた。

「レベッカーーー!!」

「うわぁぁぁーーーーー!?」

僕は今…病院のベットの上。

(感染症?初めて聞いたんだよな。)

彼女の亡骸の傍に居た彼女の家族は僕より先に亡くなってしまったらしい。

彼女からうつり僕も今その病気に侵されて。いつこの世界から旅立ってもおかしくない状況。

動けない。

だから話せない。

致死率100パーセントのこの伝染病。

『オーガプレデタウイルス感染症』

オーガプレデタウイルスと命名されたウイルスが身体の中に侵入し、あらゆる細胞が食われていくウイルス感染症。そのウイルスは文字通り細胞を食っていく。その痛みはまさに鬼に食われていくような激しい痛みを伴う。ある者は強烈な痛みに耐えきれず気絶しそのまま帰らぬ人になる事もあるらしい。個人差はあるようだけどあっという間に亡くなる人、痛みに耐え一週間は持つ人、だが…皆その強烈すぎる痛みに延命治療を断る人もいるみたいだ。そして最終的には皆死んでしまうからこの病気の救命と対応策が練れないのが医療側の答えだ。

もう…この街でどれくらいの人間が亡くなってしまったんだろう。

僕には分からない。

もう痛みは感じなくなっていた。

僕の身体はもうほとんど機能してないだろう。

今では意識の中だけで生きてるのかすらも分からない。

僕は考えるという脳を使う事すら今はままならない。

願わくばこの病気を駆逐して欲しい。

世界を終わらせてしまうこの病気を。

僕はそれを最後の望みとしてこの世を去ろう。

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