彼岸花
めづ
第1話家族
母が病死した。姉が自殺した。父は家を出て行った。まだ15歳の俺は一人家に残された。
家は家賃が払えなかったため大家さんに追い出され、俺は一人寒い冬の夜、居酒屋の並ぶ道をとぼとぼと歩いていた。居酒屋の前はあたたかいし明るい。おっさんたちの愉快な笑い声が聞こえてくる。ちょうどみんな帰宅する時間なのだろうか、若い男とおっさんが笑いながら俺のほうに向かってきた。
「坊や、酒を飲むか。」
どう見たって未成年の俺に酒をすすめてくる、それほど酔っているのだろうか。顔は赤らんでいないし、ふらふらもしていない。何かおかしいと気づいた時にはもう遅かった。すすめてきた飲み物を強制的に口に入れられた。その瞬間俺の意識はなくなった。
彼岸花の咲く丘に白いワンピースを着た小柄な少女が立っていた。俺はその少女がどうしても気になって後ろから近付いた。俺の気配に気づいたのか、こちらを振り返った。彼女の眼は赤く、そして宝石のように澄んでいた。
気が付くとベッドの上にいた。
「よう、目覚めたか。お前何て名前?」
「山野、仁。」
「山野君。私は君の主治医って言ったらちょっと違うかもだけど主治医だと思って。私は成瀬。しっかし3か月も眠ってたんだから体力ないだろ。あいつらやりすぎなんだよな。まあ、立てる?ついてきな。」
成瀬先生、何を言ってるかさっぱりだ。本当に三か月も眠っていたのか。あと成瀬先生もあのおっさんたちと関係があるのか?
成瀬先生についていくと、そこには黒くて重そうなドアがあった。
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