12話

 紺 side


 その頃翡翠と紺は──


「「……」」


 リビングは静寂が漂っていた。


 もの凄く気まずい。こういう時って何を話せばいいんだ。しかも此間のキスの件に煉とのこともあって俺はどうすればいいんだ。


 そう悩んでいると翡翠がコーヒーを持ってきてくれた。勿論俺の好きな甘すぎないやつだ。俺はありがとうと言うとコーヒーに映る自分を見つめる。少しの沈黙が流れると、翡翠から俺に話しかけてきた。


「……紺くんは煉くんの事が好きなの?」


「ふぇっ!?」


 突然の言葉に俺は変な声を上げて驚いてしまった。


「さっき顔を赤くして抱き合っていたから」


「いや煉とはそんな関係じゃないから!」


「無理しなくてもいいよ? バラさないから。」


「だから本当にそんなんじゃない!」


「えーでも」


 あーもうしつこいな! まるで煉と俺をくっつけようとしてきて。俺はお前が好きなのに、何でそんな悲しそうな表情をしながら言うんだよ。ごめん煉、俺この気持ちはしまっていられない。好きな奴に勝手に勘違いされたままが一番辛いんだ。もう見て見ぬ振りはしたくない。だから俺はッ……


「俺は煉の事は仲間として好きなだけで、俺が好きなのは翡翠、お前だよ」


 真っ直ぐ翡翠の目を見て言う。


「えっ、僕? じょ、冗談は「冗談じゃねぇよ」」


 このヘタレ野郎が!そう思いながら俺は翡翠の言葉を遮って言う。


「お前が俺のことが好きなことぐらい知っているんだよ。だからお前は喜ぶだけでいいんだよ。」


「本当に僕でいいの?」


 不安そうにしているなよ。気づいていないかも知れないけど、お前が俺にこの気持ちを教えてくれたんだからな。


「俺は翡翠が好きだ」


 誰に止められようとしても、俺はもうこの気持ちに嘘はつかない。この世界に変わらないものなんて数少ないんだ。必ず何処かで変わる。ゆっくりと変わっていくんだ。


「僕も紺くんのことが好きだよ」


 嬉しそうに笑って言った翡翠の言葉に俺はドキッとした。


 『好き』って言ってもらえた。嬉しい。


 嬉しさを噛み締めていると少し不機嫌そうに首を傾げる。


「何で煉くんと顔を赤らめて抱き合っていたの?」


「あの時はその翡翠のことが好きだろって問い詰められていたんだよ」


「ふ〜ん、で抱きついていた理由は?」


「それは、煉が俺たちが恋人になるのを嫌がっていたんだ。ずっと友達でいたいって。それで付き合わないから大丈夫だって約束したんだ」


「でも破ったんじゃ」


「うん。でも俺はこの気持ちに嘘はつきたくない。俺は真っ直ぐ煉に対して言う。縛るのは友達とは言えない。」


「そっか……」


「巻き込んでごめん。でも俺はずっと友達でいたいから」


「分かったよ、紺くん。僕はずっと紺くんの味方だから。もう僕は……」


「僕は?」


「いや、何でもないよ」


「う、うん……」


 何が言いたかったんだろうと思いながらも、一旦心にしまうことにした。

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