トップソロプレイヤーがゲームに似た世界に転生!二度目の人生は平和に暮らしたい!

文月 和奏

序章 転生したことに気づかない。

心地よい風が頬をそっと撫でる。

陽の光が俺の顔を照らして夜が明けた事を知らせてくれる。


「……はぁ~、良く寝た。7日間よく頑張った俺!」 

昨日VRゲーム『メモリーアース』のイベントである大討伐祭が終わったばかりだ。

俺ことは名だたる強豪チームを押しのけ7日間ソロでチーム戦を走り切り見事サーバー内、一位を達成したのである。

あいつらの悔しがる顔ときたら見ものであった。


で、報酬はチーム部屋のトロフィー家具だったんだが生憎俺はソロだからいらない。

たまたま欲しい奴がいたから、そいつに高値で売りつけてやった。

こうして第一回の大討伐祭の石碑に名が刻まれたのを確認した俺は記念のスクリーンショットを撮影したあと、7日間の疲れを癒すようにVR区間内の宿で死んだように寝た。


「おかしいな? こんな草原エリアのど真ん中で放置したはずないんだが」

寝たのは大都市アースの宿だったはず。こんな場所に移動した覚えはない。

上半身を起こし辺りを見渡すが、そこは見たことも無い草原エリアであった。 

不可解に思いつつも現在地を検索する為にコンソールを開こうとするのだが。


――おかしい。コンソールが出ない。

視野内にあるはずのパラメーターも見当たらない有様である。


近年のVRゲームは便利な物で、視野内に自身のアバターのHPやSP、状態、簡易マップ等が一目で見えるようになっている。

更に装備やスキル、あとはマップやゲーム内イベント等を表示できるコンソールがあって、右手のスワイプ操作に似たような動作で表示することが出来るのだが……今はまったく反応がない。ちなみに左手の操作は簡易マウス


――不具合か? 大討伐祭がサーバー負荷をかけたとか? う~ん。困ったな。

それにしても体感ってこんなリアルだったか?

風が草の匂いを運んできて頬を摩るように駆け抜ける。

その感覚はリアルのような錯覚を覚える。


「草の感触も妙にリアルだな。空も透き通っていて清々しい」

妙に心が落ち着く、昨日までの闘争の日々がまるで夢のようだ。


俺はそこで身体的な異変に気付く。

アバターの体躯に違和感を感じるたのだ。自身を見ると血色のない白い肌、腕周りは痩せ細っていて草を握る指もガリガリだ。

身体全体も肉が削げたように痩せていて、まるでゴボウのような体躯だ。

顔は見えないのだが、身体同様にげっそりしていそうな触り心地である。


まてまて!? これリアルの俺じゃね!? 

アバターをリアルに同期する機能はあったが、俺は同期をした覚えがないぞ?

むしろ、アバターは自作の物を使っていたんだがこれも不具合かよ!

っと、慌てるな俺。ここは落ち着いて持ち物を確認をしよう。

まずは服装や装備はと……う~ん。初期装備っぽいな。武器もロングソードだけとか、服装は初期の旅人の服に似ているが別物だな。

回復アイテムなし、食べものもなし、転送の羽もなし。

うん。これ積んでるわ! 唯一、幸運なのは近くには魔物がいないのと金があることだな。


「しかたないな。近くに村とか町がないか探してみるかぁ。にしても、腰に背負ってるロングソードおもっ!」

こうして俺はゲームに似た異世界に転生したことにもに気づかず、探索を開始したのであった。

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