冷やし中華始めさせられました。~ドラゴンの卵に転生したら料理された件~
鬼影スパナ
01.異世界転生。俺、ドラゴンになります!
「正直スマンかった」
と、目の前で土下座する神となのる爺様。
だが俺には分かっている、この土下座は偽物だ。誠意というものがこれっぽっちも込められていないただの前屈姿勢。
きっと頭の中では妻に浮気がばれたので謝罪する練習してる感じなのだろう。
「ちっ、ばれたか。しかしたかが人間ごときがわしの思考を理解できるとは」
きっと人間にとってミジンコがどうでもいい存在であるかのように、神様にとって人間もどうでもいい存在なのだろう。
「ほぉ。おぬし人間にしては優秀じゃの。ちなみにこの姿はおぬしが想像する神っぽい姿が土下座したもの、というのを見せておるだけじゃ」
なるほど本体は前屈すらしてなかったと。
ところでこの茶番はなんなんすかね。というか俺は死んだんすかね?
「おー、死んだ死んだ。そらもう普通に車にはねられて交通事故じゃ。まぁほれ、異世界転生じゃよ。最近流行りじゃろ? ブームじゃろ? わしもその流れに乗ってみようかと思っての。あ、人間には神の流行なぞ分からぬか」
えっ、もしかして俺ってそのために殺されたんですか?
「何か問題でもあるのかね? 人間だって幼少の頃に暇つぶしでアリを大量虐殺とかするじゃろ。それに比べれば人間1匹をちょいちょいするだけじゃぞ? 別に戦争で大量虐殺しても良かったんじゃがそれだとどれを転生させればいいか迷うじゃろ。な?」
な? と言われても……まぁ、俺1人の犠牲で世界が平和であり続けられるならそれでもいい、のだろうか。
「まぁ気にするな、地球だけで60億いるうちの1匹が死んだところでなんともならん。ま、貴族の子供にしたのは、その方が面白いらしいからじゃ」
気にするなって……えっ、俺って貴族だったんですか。まじすか。
「ようわからんが、衣食住がしっかりしていて教育を受けて大人になる者は貴族なんじゃろ? まぁ、数億いると別に
あ、なるほど。貴族多いわー。めっちゃ多いわー。一般人だわー。
「まぁそんなどうでもいいことはさておき、異世界転生じゃな。おぬしを転生させてやろう。もちろん記憶もそのままじゃ、でなければ教育を受けている奴を殺した意味が無い」
うわぁい。あ、その、チートとかもらえるんですかね? ほら、そういうのも流行りじゃないですか。ね?
「ふむ、ではそうじゃのう。……転生先を選ばせてやる。希望を言ってみよ」
……ふむ。こういうのはあれだ、貴族の三男とか、そこらへんの衣食住の不自由はない程度に自由がありかつ知識チートを生かせるようなそんな身分がいいのではなかろうか。
……いやまて。そもそも俺、転生先の世界の事よく知らないぞ? 貴族の三男で! とか言って転生した結果、貴族の三男は常に監禁される習慣があるとかだったら最悪じゃないか。
「無駄に頭が回ると余計なことを心配するんじゃな。これだから人間は……ほれ」
お、いろんな知識が流れ込んできた。なるほど、これが転生先の世界……ファンタジーだな。剣と魔法のコテコテな異世界って感じだ。よかった。貴族の三男が常に監禁される異世界はなかったんだ。
あれ、でもこれ俺以外にも転生者とか転移者とかもいるんだ。しかも結構いろいろ発達してる。うーん、今から知識チートってなると難しそうだぞ?
となると、この転生先が選べる権利は非常に重要なものとなる。
あれだ。王族や貴族に転生したところでただの役立たずになりかねない……いや待て。これって人間に拘る必要はないのではないか?
ある人は言った。『虎はなぜ強いと思う? 元々強いからよ!』と。
なるほど! と思ったね。つまり、元々強い生物に転生すれば知識のみならず力だってチートできる!
おお、よく見れば人間以外にも獣人、エルフ、ドワーフ、ドラゴニュート、精霊や妖精だってあるじゃないか。ついでに虎もある。
よし! ここは思い切って一番強い転生先にしよう!
「ほう、となるとドラゴンじゃな」
ドラゴン! いいね、喋れたり生命力が溢れまくっていたり魔法だってバンバン使える。その鱗はオリハルコンにも匹敵し、牙や爪で貫けぬものはない。さまざまな属性のブレスを吐き散らし、恐怖と信仰の対象にもなっていたりする……! すばらしい、まさしくドラゴンこそ俺の理想の転生先だ!
将来的には人化だって覚えられちゃいそうだ。もっとも、これは100年は修行する必要ありそうだけど……
よし、決めた! 決めました! 俺、ドラゴンに転生します!
「ほっほっほ、よかろう。おっと、知識は回収しとくぞ」
あっあっ、世界に関する膨大な知識が流れてく……さすがにこれを持っていかせてはくれないか。覚えられてたら大賢者になれたのに……
まぁいい、ドラゴンや種族、他にも転生者とかが居るとかそういうことは覚えてる。ならあっちの世界でまた覚えるだけさ。
何せ俺はドラゴン、最強生物だ。寿命も数万単位でたっぷりあるからな!
「では精々楽しませてくれよ」
神様にそう言われて、俺の意識は闇へと落ちて行った。
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