第三焼 ゴーレムの来店

 宣伝してきたが効果はない。誰も来ない。美味しいのにな。と、一人焼き鳥を食べる。


 不意に洞窟の入り口に人影が現れる。


「いらっしゃ——」

 口を開けたまま固まった。


「ゴーレム!?」

「やってるー?」

「え、あ、ああ」


 うろたえてしまって正直に答えるしかなかった。声が想像よりポップで高い。

 全身灰白色かいはくしょくの岩石でできており、肩や肘や膝の辺りはところどころ欠けていた。声色とは違い、落ち着きのある雰囲気だった。顔にある黄色のぼんやりとした二つの丸い光が目だろう。


 窮屈そうに椅子に腰を下ろした。お尻が半分くらい出ている。

 俺は椅子を拡張するために魔法を使おうとしたが、ゴツゴツの手で止められた。


「体に良くないでしょ?」

「なぜそれを?」

「君、子供と私を助けるために土魔法を使って、そのあとゲロってたじゃん」


 思い出した。以前、ダンジョン化してしまった元神殿に近所の子供が迷い込んでしまったので探しに行ったことがあった。そのときに居たゴーレムだ。なんだか雰囲気変わったな。

 ゴーレムは神殿を守るために作られた石人形だ。穢れを浴びて魔物化することもあるが、今は魔物ではない。エフィがボスを倒したときに正気に戻ったのだ。


「にしても、なんでこんなところへ?」


 俺は焼き鳥を皿に盛ってゴーレムに差し出した。


「いろいろあってねー」


 そう言ってゴーレムは焼き鳥を食べた。


「んー美味しい!」


 口も石だけどどうやって噛んでるんだろうって言うか石の中に焼鳥が入ってそんでそのあとどうなるん……いや、やめよう。多分本人もわからない。


「ところで私お金持ってないんだよねー」

「それ食う前に言ってぇ?」


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