第15話『六条御息所とネル』

やくもあやかし物語 2


015『六条御息所とネル』 





 日本に居る時、いちばん付き合いが長かった妖はチカコだった。



 でも、チカコは皇女和宮さんの分身で、漢字で書くと親子。


 最後は、ずっと親子のことを心配していた家茂さんが百何十年かぶりで迎えに来て幸せになって海の向こうに行ってしまった。


 だからね、やっと幸せになったチカコに期待しちゃいけない。


 交換手さんは『鬼の手が送れましたから、ひとり味方がそちらに行きます』て言っていた。


 だからね、王女さまのところから戻って、机の上の後姿を見た時は、不覚にも声に出てしまった。




 チカコ!?




「だれがチカコだってぇ?」


 振り向いた顔を見て思わず叫んでしまった。


「ギョエ!」


「ギョエはないだろ、ギョエはぁ!?」


 同じ1/12サイズのロン毛だから見誤ってしまった。




 六条御息所ぉ……(^_^;)




「えと……神保城とかはぁ?」


 御息所は、神保城では総理大臣をやっていたはずだ。


「ああ、岸田ナントカほど未練たらしくないから、滝夜叉姫に譲ってきた」


「ええ、滝夜叉さんは神田明神のお仕事があるでしょ?」


「ああ、将門さんの病気も治っちまったし、なんか『やくもの役にたってやれ』って、洒落みたいなこと言って、んでさ……まあ、いいじゃない。この六畳御息所がやってきたんだから、百人力だとありがたく思いなさいよ」


「あ、うん、ありがと(^_^;)」




「え、なにそれ!?」




 ネルが帰ってきて目を丸くしている。


「な、なによ、このとんがり耳はぁ!?」


 御息所も腰を抜かして驚いている。


「え、えとですねぇ……(^△^;)」




 ネルには御息所のことを、御息所にはネルのことを説明してやる。




「ああ、やくもの使い魔か」


「使い魔? なんか印象悪いんだけどぉ。そっちこそ、角を耳に変えただけの鬼なんじゃないのぉ(´¬_¬)?」


「デーモンなんかじゃないよ、エルフは森の神族なんだよ、平和と調和を重んずる賢い種族なんだからね」


「なんか、無駄に大きいし」


「人の夢の中に出てくるってことは……見た感じかわいいし……」


「ホホ、長耳も分かってるわねえ」


「サキュバスの一族?」


「サキュバ……?」


「あ、男の夢の中に出てきてねセックスする妖精」


「セ、セックス(;゚Д゚#)!?」


「うん、悪い奴じゃないわよ」


「わたしは、女の夢にしか出ないから(>∀<)」


「え、インキュバス!?」




「ああ、もう、そこまでそこまで! とにかく、仲間同士なんだから仲良くやって! ね、仲間なんだから!」




 とりあえず納得……させたわけじゃないけど、準備でき次第森の入り口で待ち合わせなので、テキパキと準備した。




☆彡主な登場人物 


やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生

ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ

ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁

ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師

メグ・キャリバーン  教頭先生

カーナボン卿     校長先生

酒井 詩       コトハ 聴講生

同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ

先生たち       マッコイ(言語学)

あやかしたち     デラシネ 六条御息所

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