学園ゲームの最強の無個性モブキャラに転生した俺は全てを力でねじ伏せ、傲慢で不遜に無双することにした。俺がひたすら活躍するために動くことにした。原作主人公は引っ込んどけ。
にこん
第1話 そこはゲーム世界だった
目覚めた時俺は正座させられていた。
「……この男が学園の敷地で倒れていた、と?」
「そうです」
そんな言葉が聞こえてきて俺は伏せていた顔を上げた。
会話は目の前から聞こえていた。
目の前には2人の男。
1人は騎士風の男、それからもう1人は学園長?とでも言えばいいのだろうか。
そんな感じの見た目の男だった。
(てかどこだここ)
ジャラ、ジャラ。
俺は体を動かそうとしたら自分の体に鎖が巻き付けられていることに気づいた。
(鎖?拘束されてる?)
そんなことを考えていたら騎士風の男は俺を見下ろして口を開いた。
「名乗れ。不審者」
不審者……?俺のことか?
そう思いながら俺は口を開いた。
「レイン」
口に出した名前は俺の名前じゃなかった。
(あれ、なんで?)
そう思っていたら男が聞いてきた。
「名はそれだけか?」
聞かれて俺は頷いた。
ここでやっとなんとなく分かってきた。
(俺の中に俺の知らない記憶がある。おそらく俺は今異世界転生?したのかもしれない。この記憶は俺の意識が宿る前の人物の記憶、か?)
おそらく、これはそういうことだと思う。
そうやって気付いたら俺の中にいろんな知識が流れ込んできた。
この世界のこと、俺のこと。
そしてこの学園のこと。
全部分かった。
分かってから俺は男を見上げた。
「貴様は今不法侵入の罪状で捕まっている」
そう言われて俺は返す。
「分かってるさ」
「逃げようなどとは考えない方がいい」
そう言って俺の手に巻き付けられた鎖に目をやる男。
「魔力を無効化する素材で作られた鎖だ。抜け出すことはできん」
そう言われて俺は笑ってこう呟いた。
「
ドロッ。
鎖が溶けた。
そして立ち上がる。
「魔力を無効化、ねぇ。できてないけど?」
そう言って男を見ると俺は学園長の横に移動した。
「き、貴様……」
今度は学園長が俺を見てきた。
「今何をした?これは魔力を無効化する鉱石でできた鎖、溶けるわけが、ない」
俺は答える。
「それはお前たちの常識の中での常識だろう?」
ザワザワ。
2人は話し合う。
「ど、どういうことなのですか?!学園長。この男の言っていることの意味が」
「分からん。とにかく増援を呼べ!この男は危険すぎる!」
その言葉を聞いて俺は両手をあげた。
抵抗の意思は無いことを表明する。
「増援なんていらないよ。敵対の意思は無いから」
「そ、その言葉が信用ならんぞ?不審者」
そう言って騎士風の男は俺に剣を向けてくる。
「俺がその武器を壊してない理由を考えて見てくれないか?」
「は?……こ、壊してない理由?ば、馬鹿なこの剣はミスリル。この国で一番硬度の高い鉱石でできている壊れるわけが」
【鑑定】
今度はスキルを使い俺は剣の【弱点】を見つけた。
それを見つけて。
スっ。
デコピンをするように手を剣の刀身に近付けて。
ピン。
指を弾いた。
「そ、そんなデコピンで壊れるわけが……」
男が言った時。
ピシッ。
ビキビキビキビキビキ!!!!!
剣に一気に亀裂がはしり。
そして
ガラン。
ガラガラガラガラガラ。
剣は砕け散った。
破片は床に。
それを見て男に目をやった。
「やろうと思えば初めに壊せた。それでも壊さなかった理由を考えてみて欲しいんだ」
プルプル震えた騎士風の男。
そして、その時だった。
ガシャガシャガシャガシャ。
俺の背後にある扉の向こうから鎧の音。
それが聞こえてからしばらく。
バン!
扉が開け放たれてそこに現れたのは。
「な、なんの音ですか?!」
「学園長?!」
そこにいたのは鎧に身を包んだ奴ら。
そして俺を見るなり。
「何者だ!」
「怪しいヤツめ!拘束してやる!」
手に持っていた槍を俺に向けてきた。
「両手を上に上げろ!」
そう言われ俺は両手を頭の上にあげた。
それから学園長と呼ばれている男に目をやる。
「敵対の意思はない。あなたからもそう言ってくれ」
「どうやらそのようだな」
学園長が頷いた時だった。
「騙されるなぁぁぁぁ!!!!拘束しろぉぉぉぉ!!!」
「この不審者がぁあぁあ!!!!」
騎士達は俺に突進してくる。
俺はそれを見て動かずにこう呟いた。
「グラビティ」
次の瞬間。
クン!
騎士たちの体は床に引き寄せられるようにして床に大の字で張り付いた。
「がっ!!」
「なんだこれは!体が張り付いて動かないぞ?!」
そんな騎士を見てから俺は学園長に目を向ける。
「敵対の意思はない。ないが危害を加えられそうになれば制圧はする」
そう言ってみると学園長は俺に頭を下げてからこう言ってきた。
「今までの非礼を謝罪させてくれ。そしてひとつ頼みがある」
「頼み?」
俺が聞くと学園長はこう言った。
「この学園。アーノルド魔法学園へ入学してもらえないだろうか?見たところ、行くあてもないのではないか?」
俺は学園長の目を見てこう答えた。
「いいよ」
知っている。
【アーノルド魔法学園】のことも。
そして俺が今いる世界のことも。
当然ここは日本じゃない。
ここは異世界。
それもゲーム世界だな。
タイトルはまんま【アーノルド魔法学園】。
ストーリーは主人公が魔法のある世界で成り上がっていく、というもの。
だが俺が転生したのは主人公ではなかった。
【レイン】とだけ名前がつけられた設定だけのモブキャラだった。
だがこのモブキャラ。
設定だけはモブではなかった。
─────────作中最強のDLCキャラ。
そんな設定があったがその力をゲームの本編で見ることはなかった。
なぜならレインは目立つのが好きではなく、そして色んな事情があってレインは力を隠していたからだ。
でも俺は思う。
(力があるなら存分に振るわないと損じゃないか?)
力は見せつけるためにある。
隠しておくものじゃない。
学園長の目を見た。
今の状況は向こうからの頼みを一方的に聞いたことになる。
別にそれでもいいんだけど俺からもひとつ。
頼んでおくことにする。
「記憶が無い。世話役をつけて欲しい」
そう言うと学園長は頷いた。
「娘をつけよう。名はシャーロット」
娘、か。
その言葉を聞いて思い出す。
アーノルド魔法学園の学園長の娘を。
『ぷぷっ。あんたみたいな雑魚より私の方が強いんだから☆』
みたいなやつだった気がする。
そんなことを思い出していたら学園長は机の上に置いていた呼び鈴を鳴らす。
するとしばらく経った時
「なんですの?お父様」
学園長室の扉が開いて入ってきたのは、金髪ツインテールのザ・お嬢様。
そして俺を見るなり目を細めた。
「なんですの?そのみすぼらしい男は」
(出たか)
原作の主人公も言われてたなぁこんなこと。
そしてその時の選択肢がこれだ。
→黙る
・笑う
こんな感じの選択肢。
俺好みの選択肢がなかったように思う。
だから今回は俺好みの選択肢を取ろうと思うんだ。
これ以上はない最悪の返事。
俺はシャーロットの目を見てこう言った。
「君ほどみすぼらしくないさ。君の性格の方がよっぽどみすぼらしいよ?」
一瞬で空気が凍った。
騎士の男が口を挟む。
「いい加減にしないか?!レイン!貴様!相手が誰だと……」
その口を言葉で塞ぐ。
「お前には話していない。黙っていろ。俺に意見するなよ?」
そうして俺はシャーロットに目をやって続ける。
「俺の前で次に生意気なことを言ってみろ?即刻案内役をチェンジだ。俺はお前みたいなやつが嫌いなんだよ」
そう言いながら横を通っていこうとすると。
パッ!
シャーロットは両手を組んで目をキラキラさせて俺の顔を見ていた。
「すてきっ♡」
そう言われて俺は脱力した。
右肩だけ力が抜けて下がる。
「はっ?」
なにが素敵、なんだ?
そう思っていたらシャーロットは学園長に目をやってこう言った。
「お父様。私はこのお方を婚約者にしますっ!」
目をキラキラさせてそう言った。
(????????)
俺と学園長は目を合わせて
「「はぁあぁぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁ?!!!!!」」
驚いて叫んだ!
なんだこの展開は……
知らないぞ。こんな展開
おい……シャーロットは生意気な女じゃないのか?!
なんで従順(?)になってんの?!
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