第61話 邂逅
俺は1年に清水を病院に運ばせ、改めて面子を見回す。
親友の涼人、楓。
気絶した俺を滝川さんの家まで運んでくれたらしい珀。
そして、才能開花した凛。
東部……いや、北区の最高幹部が勢揃いしていた。
「皆……迷惑かけて悪かった。ありがとう」
皆に向かって、俺は頭を下げる。
後悔はしていないが、俺が滝川さんを助けに1人行動したことで楓や涼人、凛は傷ついた。
謝るべきだろう。
「仁……」
「……気にすんなし! 気持ちは分かるしね」
「仁には借りが沢山あるからな。気にするな」
涼人と楓、珀は許してくれたようだ。
そして、凛は……
「……別に、いいですよ」
普段通りの声色で、明るく言った。
「凛──」
「──けど、その助けに行った女って誰ですか?」
「っ!?」
笑顔の凛の迫力に、俺は思わず面食らう。
(そっか、やっぱり【
……そういや、ステータスどうなってんだ?
俺は、凛に【観察眼】を使用する。
(──はっ?)
『
『才能開花!』
『155cm』『52kg』
『力 S
俊敏 S−
知力 A
耐久力 A−』
『専用スキル:【
「え……」
「仁先輩?」
え……?
俺は目を擦って、ステータスを見直す。
(正気か……!?)
全能力値が6段階も上がってんぞ!?!?
イカれてんだろ!?
しかも、こっからまだ3段階上がるって……
(これが、才能Sの力……)
『神楽仁:才能E』
……いずれ、才能を上げるスキルも出てくるのか?
「仁、先、輩?」
「ッ!!」
凛の感情を感じない声に、俺の意識が一気に現実へ引き戻される。
「あ、あぁ……いや……ちょっと待ってくれ」
「「「……?」」」
だが、凛には悪いが、今はそれより気になることがある。
(『
初めて聞くメッセージだ。
もしかして、クエストに何かエラーが起きて無くなってしまうんじゃないか……と気が気でない。
(一体……)
『復旧しました!』
『クエストが変更されます!』
「っ!」
俺の懸念に答えるかの如く、クエストウィンドウが目の前に出現する。
そこにあるメッセージを見て……
「は……っ?」
「仁?」
驚きのあまり、固まった。
そこに書かれていたのは──
『Rスキル【%&=~=~=~%】を獲得しました!』
『Rスキル【】を獲得しました!』
『Rスキル【……』
『報酬が変更されました!』
『管理者に会うことが出来ます!』
「管、理者……だと?」
『この世界を創造した主があなたに会いたがっています!』
管理者。神。
クエストを出していた、大元……?
(……本当に、いたのか)
ある日突然手に入れた非現実的な力。
神が与えたチャンスだと思っていたが……
本当に神がいるとは、思ってなかった。
『管理者に会いますか?』
『はい いいえ』
「……」
丁度いい。
いずれ会ってみたいとは思っていたんだ。
(まぁ、こんな早くにその機会が回ってくるなんて思ってなかったんだけど……)
いずれにせよ、答えは決まってる。
『はい← いいえ』
(──当然、“はい”だ!)
俺が頭の中で、“はい”を選んだ瞬間──
世界が、色を失った。
「……っ!?」
(まさか……)
俺は体を動かしてみるが、普通に動く。
しかし、涼人や楓、珀と凛は皆……
「時間が、止まってる?」
1ミリ足りとも、動いていなかった。
「──その通りです」
「っ!?」
俺の疑問に答えるかの如く、上空から声がする。
俺が顔を上げると、そこには──
「はじめまして、ではないですかね? 私は──」
『サマーソルトを使用します』
俺は空から降りてきた彼女に対して、飛び上がって蹴りを繰り出した。
「……?」
「おい」
俺は、滝川さんの姿をした彼女を睨んだ。
「悪ふざけはやめろ」
『アジテーションを使用します』
『決戦の時間を使用します』
威嚇する俺を見た、その彼女は……
「……プッ」
思わずと言ったように、吹き出した。
「あははは! やっぱり、見込んだとおりだったわ! ごめんごめん、ちょっと試しちゃって」
「……あ?」
な、なんだ……?
神様にしてはちょっと……いや、かなりフランクだぞ!?
「え、えっと……?」
「あー、ごめんごめん! まぁ、お察しの通り……私がここの神よ」
神がそう言うと、その体を謎の風がカーテンのように体を包み込んで……先程とは違う姿の神が、姿を現した。
白みがかったオレンジ色の髪に、この世のものとは思えないほどにバランスの良い肢体。
絵に書いたようなと言うのも
それを見て、俺が最初に感じたのは……
(……滝川さんの方が、可愛いな)
「……はぁっ!?」
(てか、神様なんだからもっと綺麗にしたらいいのに……)
「ちょ、ちょっと!!」
「ん?」
「何言ってんの!? この世界で表現出来る1番美しい顔なんだけど!? 私!!」
あれ……声に出してないよな?
神様はどうやら心を読んで不服そうだ。
「あー……いや、たまたま俺のタイプじゃないからだと思いますよ? タイプとか関係なしに見たら確かに今までで1番綺麗な人なんで……」
「だから、そんなわけないでしょ!? タイプとか……私はこの世界で1番綺麗になる権利を持ってるんだけど!?」
あ……だから最初滝川さんの姿で来たのか?
「はぁっ!? そうじゃないって……あぁもう!」
神様は頬を膨らませると、大きく息を吐いた。
「……まぁ、あなたらしいっちゃあなたらしいけどね」
「?」
「まぁ、時間もないし……話をしましょう」
「!!」
神様はそう言って、宙に寝そべった。
「まずは……何が聞きたい?」
「じゃあ、なんで俺を選んだんですか?」
一寸の迷いも無く、俺はそう問う。
「……! どうして最初にそんなこと……」
「いや、どう考えても聞いてほしそうな感じでしたよね? “あなたらしい”とか言って匂わせといて……まぁ気になるし聞いとこうかと」
「ふ、ふふん! そんなに言うなら教えてあげる!」
神様は思った通り、それが話したかったようで、上機嫌になった。
『女の子はねぇ〜……アドバイスとかより話が好きなんよ? だから、仁もその好きな子と話す時は相手の話したいことを誘導してみたら?』
『んなこと言われたって何が話したいかとか分からねぇよ……』
『まぁ、分かる時だけでいいからさ! パフェのお礼!』
……楓には結構助けられてる気がする。
「まぁでも、そのためにはここから教えないとね」
「?」
神様はそう言って、語り始めた。
「私がどうやって、生きているか」
「……!」
「まず、神って寿命の代わりに、エネルギー消費するのよね。簡単に言うとそのエネルギーを星の核から吸い取ってるんだけど……その通路が塞がれちゃったわけ」
……話が見えて来ない。
もう少し聞いてみよう。
「通路上に高層ビルを建てられちゃったからなんだけど……まぁ、それならほぼエネルギー摂取には関係ないのよね」
「……????」
え、じゃあ別にいいんじゃ……?
てか、それならなんで個人にクエストなんか出して……
「だけど、死体があれば別よ」
「ッ!?」
「そいつらがビルの地下に、死体を埋めた。それも、沢山ね」
死体……?
なんだ……? もしかして、人間の……?
「世の中、分かってるかは知らないけど、明るい面と同じくらい暗い面があるものよ。そのせいでエネルギーが全然取れなくなって、このままじゃ寿命が縮んじゃうの」
「……つまり、命に関わるからなんとしても解決したい、その手段として俺にクエストを……?」
「そうよ。私が直接吹き飛ばしてやりたいんだけど、直接下界に手を下すことは出来ないの。だから、代理者を立てることにした」
それが、“クエスト”……!
「まぁでも、それにも色んな制約があってね……正直ちょっと放置しすぎて気づいたら状況がかなりやばかったの」
「えぇ……」
怠惰か……?
「こらっ! ……で、個人に付加するのが1番便利なんだけど制約が厳しいから……私はこの世界に自立式の
「世界に、?」
え? クエストって、俺に与えられたんじゃ……
「私が設定したのよ? “最も目的達成にふさわしい人間1人に『クエスト』を通して
開いた口が塞がらない俺を無視して、神様が続ける。
「『クエスト』っていう制限を付けることで、付加出来る能力のレベルを上げたわけ。それで、世界はあなたを選んだ」
「俺を……?」
そこで俺は、1番聞きたかった本題について尋ねることにした。
「どうして、俺を……?」
「それは簡単よ」
神様は、言葉の通り簡単に告げた。
「私は求めた。最後まで目的を達成できる究極の意志の持ち主……目的のためなら、自らの苦も厭わない……一途な人間を」
俺の瞳を、面白そうに見つめて──
──────────
遂に邂逅した神と仁。
『クエスト』の全貌を知った仁が、歩んでいく未来とは──!?
次回、1章最終話!
『愛に狂った一人の少年』
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