『メインクエストが開始しました!』〜クエストとスキルの力で俺はリア充青春ライフを目指す!〜

星影 迅

第1話 『メインクエストが開始しました!』


『メインクエストが開始しました!』


 突然、俺の目の前にそんなメッセージが出現した。


「えっ?」


『メインクエスト:ゴミをゴミ箱に捨てる』

『ゴミ 0/5』

『報酬:SSRスキル』


「スキル?」


 遂に頭がおかしくなったのかもしれない。


 二年生になって初の下校中の事だった。

 唐突に、そんな半透明の画面が現れたのだ。


「どうしたんだ? じん


「なぁ……さっきから俺の目の前に透明な画面が見えるんだけど」


 俺は隣にいる親友、水霧涼人みなぎりりょうとに目の前の画面を指さして言った。


「は? なんだよそれ! 厨二病かよ……ステータスオープンってか?」


 言って損した。


 涼人は腹を抱えて大笑いすると、「俺こっちな」といって帰ってしまった。


 ……うん、普通そう思うよな。


 でも、今俺の目には確かに、そんな半透明パネルが映っていた。


「……ステータスオープン」


 一人になった俺は、内心ワクワクとしてそう呟いてみる。


「……」


(……)


「……なんも起きねぇじゃねぇかよ!」


 恥ずかしくてつい両手で顔を覆う。

 涼人に言われてもしかしたら……なんて考えた自分が馬鹿みた──


『ステータスはメインクエストをクリアすると解放されます』


「──え?」


 あんの……?


 まじで…………!?


「と、とりあえず……ゴミ拾ってみるか?」


 唐突に訳分からない状況だけど、なんだかワクワクしてきた……!


 目の前に現れた画面を見て、俺は落ちているゴミを探し始めた。



〜〜〜〜〜



『ゴミ 5/5』

『メインクエストをクリアしました!』


「はぁ、はぁ……案外こうしてみるとゴミなんて落ちてねぇもんだな……」


 それより、報酬だ!

 報酬はどこだ!?


『SSRスキル【鷹の目】を獲得しました!』


「おぉぉ!! スキル!!」


 俺は家まで待ちきれずに、その場で叫んだ。


「ステータスオープン!」


神楽かぐら じん

『170cm』『58kg』

『力   D

 俊敏  D+

 知力  D−

 耐久力 D 』


「う、うおおお!」


 ステータスだ!


 ステータスが……


「……知能D−ってなんだよ!」


 やかましいわ!


 え? 一年の英語の成績?

 欠点は取ってないから。


 欠点は。


 頭の中で3だらけの成績表が思い出される。


「……くそっ、そんなことよりステータスだろ!」


 まさかこんなことが現実で起こるなんて。

 理由は分からないけど、こんなの……!


「最高じゃん!」


『メインクエストが開始しました』

『メインクエストに失敗又は辞退すると全ての能力値とスキルは永久に失われます』


『メインクエスト:皿を洗う』

『皿を洗う 0/10』

『報酬:SSRスキル』


「!!」


 クエストだ!


(待て……またSSRスキルをくれるのか!?)


 SSRって言うくらいだから凄いスキルなんだろうな?

 そういや、さっき貰ったスキルがあるな……


 俺はスキルを確認しようと念じてみると、画面が切り替わる。


『保有スキル』

『SSR:【鷹の目】』


「おお、これこれ……なんか凄そうな名前だけど……どんな効果なんだ?」


 俺はスキルの名前をタッチしてみる。


【鷹の目】

視力が2.0になる


「……まじ?」


 俺はパッと周りを見回してみる。

 すると、驚くほどの情報量が入ってきた。


 俺の視力は0.5〜0.6くらいだったはずだから……


「やべぇ……めちゃくちゃ見える……!」


 いつもぼやけていた駅の向こう側の看板の文字さえ読める。


 本物だ……


 このスキルは、本物だ!


 俺は興奮冷めやらぬまま、小走りで家に帰った。



〜〜〜〜〜



『皿洗い10/10』

『メインクエストをクリアしました!』

『SSRスキル【再誕】を獲得しました!』


「お?」


 晩御飯の後、皿洗いをしているとそんなメッセージが現れた。


 そうそう、これを待っていたんだ!


 皿洗いするって言ったらお母さんがなんか感動して熱を測ってくれたけど……


 台無しじゃねぇか。


 まぁ、俺も企みがあってやったことだけど……


(にしても【再誕】……? なにか分からないけど……凄そう!)


 俺は皿を置くと、スキルについて確認する。


【再誕】

全身の皮膚や歯、臭い等を清潔にする(使い切り)


「え……」


 つまり……これを使えば、一瞬で清潔力を手に入れれるってことか!?


「すげぇ……」


 現代の非リア高校生として、最高に嬉しいスキルだ。


 ただ……


「“使い切り”……」


 一度使うと、無くなるスキルなのだろう。

 なら……


「使うのはもう少し待ってみよう」


 折角のスキルなんてファンタジーなものを手に入れたんだ。

 もう少しスキルを眺めてニヤニヤしたい。


「……でも、スキルのレアリティはどうなってるんだ?」


 俺の疑問に答えるように、クエストウィンドウが出現した。


『スキルにはR→SR→SSR……それ以上のレアリティが存在します』

『Rが低く、SSRの方が高いレアリティです』

『レアリティが高いほど優れたスキルが獲得できます』


 なるほど……

 ってことは、SSRスキルは結構レアなんだな?


 最初だから沢山貰えてるのだろうか……?


(もしかしたら……この『クエスト』の力を使えば、夢のリア充にもなれたりして……!?)


 明日にはクエストが消えてる……なんてことになりませんように……


 そう願って、俺は一日を終えた。




『メインクエスト:胎動』

『達成条件1:高梨颯太から逃げる』

『報酬:SRスキル』



〜〜〜〜〜



「おはよー」


「おはよー」


 次の日。

 俺はウキウキで学校に登校していた。


(学校に行くのが楽しみなのは久しぶりだ……!)


 またクエストが出たりするかもしれない。

 直接学校が楽しみな訳ではないのだが、学校なら何か新しいクエストが出現しそうだと俺はワクワクしていた。


「おはよ、仁」


「おお、おはよう涼人!」


 教室に入ると、涼人から声をかけられる。

 涼人は去年からの知り合いで、友達も多くない俺にとって大切な存在だ。

 たまたま今年も同じクラスになれてラッキーだぜ。


「昨日の病気は治ったのか? ほら、ステータスオープンって」


 涼人はクスクスと笑いながら俺の頭をツンツンとつついてくる。


「お前なぁ……てか、それ言ったのお前じゃねぇか」


「え? そうだっけか? アハハハハ!! ところでお前、なんか機嫌いいな?」


「えぇ? そんなことねーよ」


「そんなことあるって! 何かあったのかよ! 教えろって!」


「席に着けー」


 涼人と席で言い合っていると、新しい担任が教室に入ってきた。


「うわー来栖くるすちゃんかよー」


「最悪ー」


 そんな声がチラホラと聞こえてくる。

 来栖といえば、スパルタ英語教師だな。


 奴の抜き打ちテストに何度苦しめられたことか……!


 まぁでも、今日は初日だから……


「今日の一限は身体測定だから、体育館に集合するように!」


 身体測定……!


「仁、どうした? ニヤニヤして」


「いや、身体測定楽しみでさ」


「はぁ?」


 伸びた視力を試す時だ……!

 俺は上着を脱ぎ、席を立つ。

 すると同時に、クエスト画面が現れた。


『サブクエストが開始しました!』

『サブクエストは失敗又は辞退しても問題ありません』

『サブクエスト:天上天下?我は天井』

『天井に頭で触る 0/1』

『報酬:SSRスキル』


 天井に頭で触る……?


 また意味のわからないクエストが出たが……


(SSRスキル……!)


 やらない手は無い!

  確か体育館のトイレは天井が低かったはず……


 俺は早速、身体測定に向かったのだった。



〜〜〜〜〜



『天井に頭で触る 1/1』

『SSRスキル【見下ろし】を獲得しました!』


【見下ろし】

身長が5センチ伸びる


 結局あの後、俺はスキルを手にして身体測定を終えた。


 身長は175、視力もしっかり2.0になっていた。

 ああ……人生最高の日だ。


 ただ、1つ気がかりなのが……


『メインクエスト:胎動』

『達成条件1:高梨颯太から逃げる』

『報酬:SRスキル』


 俺が寝てる間に、どうやらメインクエストが出ていたらしい。


 高梨颯太って言ったらうちのクラス名簿にいたけど……


「逃げるってまたなんで?」


 答えは直ぐに分かった。


「おい、お前」


「ん?」


「ちょっと、金貸せよ」


「……はぁ?」


 放課後。

 高梨颯太が、俺の席に来たからだ。





──────────

新連載!


第1話をお読みいただきありがとうございます!

本日19:31、21:01の一挙3話投稿となります!


少しでも面白い、続きが気になる、と思った人はフォロー、及び最新話か目次の下部より★★★をポチッとしてくださると嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る