「見た?」「見た見た」

第3話 今流行りの

好きな動画配信グループがいました。四人組で、ホラー動画を引用してコメントをするグループでした。

ある時彼らはこう言いました。


「もう、おもしろいホラー動画残ってないな」

「じゃあ自分たちで作ってしまおう」

「自分たちならきっと恐い動画を配信できるよ」

「作ろう! 撮ってこよう!」


そう言い残して、彼らは姿を消しました。




好きな人たちだったんです。

引用する動画はどれも僕の好みだった。個性がハッキリとしている人たちだった。僕のコメントに毎回返事をくれた。ちゃんと僕のコメントを読んでくれた。

何百の名前の中から「僕」のアカウントを見つけてくれた。

好きな人たちだったんです。




じゃあ、始めるよ。




その一。いつものハイテンション、山田さん。グループのムードメーカー。明るくて究極のネアカ。

最期に彼が投稿した動画は廃病院で噂の検証をする実況系のものだった。


その二。クールオブクール、佐藤さん。ロボットだという噂があるほど淡々としている。機械とお友達。

最期に彼が投稿した動画は廃墟となったコンビニで起こる怪異現象を監視カメラで映したカメラは見た系だった。


その三。オネエはアニキ、田中さん。男性だけど心は女性、らしい。本当か?

最期に彼、彼女? が投稿した動画はインタビュー形式で怪異を追う聴き込み系だった。


その四。自称イケメン男爵、鈴木さん。顔出ししていないのにイケメンと言い張る、「自称」イケメン。

最期に彼が投稿した動画は典型的なトンネルでの肝試し、実況系だった。


彼らは最期の投稿動画を遺して消えました。


憧れていた人たちだったんです。「僕」の些細な声を聞いてくれた、優しい人たちだったんです。

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