第52話:どくろ一家、誕生前夜



何故なにゆえ、どくろ?」


 水着の買い出しから戻り、夕食時。


 母達に買った水着の話をしたらば。


 ある意味、母達の当然の反応とも。


「なんかね、気に入っちゃった」

「雪人ちゃんのパンツが気に入ったんだ」

「そうとも言う」


 アカネと美里の、母娘おやこの会話。


「雪人ちゃんのパンツのどこが気に入ったの?」

「えっとね……ごにょごにょ」


 母の耳元に囁く、娘・アカネ。


「ほぅほぅ……」

 その囁きを受けて、母・美里も。


「なるほど、そういう使い方が出来るのね!」

 と、感心しきり。


 自分のパンツの話題に、気まずい雪人は聞かない振りをしているが。


「雪人ちゃん、私にもパンツ貸してっ!」

 と、無常な母・美里に雪人は。


「げほっげほっ……美里ママ……」


 思わず、喉を詰まらせそうになる。


「えぇ? なになぁにぃ? 美里ぉ?」

 と、母・雪枝まで。


「えとね……ごにょごにょ……」

 雪枝に耳打ちする、美里。


 伝言ゲーム?


「なるほどぉ! それはぁ、是非ぃ! 雪人ぉ! パンツ貸してっ!」

 さらに無慈悲な、母・雪枝。


 さすがに。

「ボクのじゃなくて、新しいの買ってくればいいじゃない。それより、パンツじゃなくて、水着の話、でしょ?」


 そうだった。


「んーん。子供達がぁ、どくろで揃えるならぁ、私達もぉ……どくろで揃える?」

 雪人のパンツは、後で洗濯物からこっそりで良いかと、雪枝が話を戻して切り替える。


「私はやだなぁ……可愛くないよ、どくろ……」

 美里はさすがにどくろに乗り気になれないらしい模様。


「んー、でもぉ、でお揃いもぉ、いいじゃなぁい?」

 雪枝はどくろ推奨派の模様。


「うー、そう言われると……」

 明らかに、美里は雪枝には弱い。雪枝も押せば通るとわかっている。


「んじゃ、決まりねぇ。店舗ではぁ、あまり売ってなさそうだからぁ、後でぇ、ネット通販、調べましょぉ」


 もぎゅもぎゅ。


 とりあえず、一旦、話題終了。


「むぅ……」

 納得しきれない美里も、反論はできず。


 まあ、しょうがないか、と、食を進める。




「マジ……?」


 どくろ家族。母子四人。


 並んだところを想像して。


 雪人は、ちょっと頭が痛くなった。

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