百合の母達が子等に乞い願う・ピュア

なるるん

第一章:百合の母達とその子供達

第1話:百合の母達が乞う願い




「雪人、アカネちゃん、お誕生日、おめでとぉ~!」

「二人とも、誕生日おめでとう!」


「ありがとう、母さん、美里ママ」

「お母さん、雪枝ママ、ありがとう」


 リビングの食卓。


 バースデイケーキに十六本のろうそく。


「さあ、二人とも」


 隣り合う雪人とアカネは、一度顔を見合わせて頷き合うと、


「せーの」


 文字通り、息を揃えてろうそくの灯を消す。


 パチパチパチ!


「おめでとぉ!」

「おめでとぅ!」


 向かいに座る『二人の母』からの祝福。


 雪人とアカネも手をとり合って微笑み合い、互いの誕生日を祝う。


 そんな若い二人を見守る『母達』がつぶやく。


「あと二年、ね……」

「まだ、二年もあるのねぇ……」


 そんな母達のつぶやきに対して娘のアカネが元気に答える。


「十六年も我慢したんだし、あと二年くらい我慢してよ。わたしだって我慢してるんだし!」


「ちょ!? アカネ! ぶっちゃけすぎ!」


 息子の雪人は、真っ赤な顔でアカネに突っ込みを入れる。


「早く孫の顔が見たいわね、雪枝さん」


 雪枝と呼ばれた母が、もう片側の母の手を握り、語りかける。


「ええ。本当は今すぐにでも見たいところ、だけどねぇ。美里」


 手を握り返しながら呼応するもう一人の母・美里。


「いいから、早く食べようよ。腹ペコだし。せっかくの料理、冷めちゃうだろ」


 そう言って箸をとる息子、雪人。


「んふふ。照れちゃってぇ」

「まぁまぁ、雪人ちゃんの言う通り。先ずは食事ね!」


 いただきますの四重奏。


 和気あいあい。仲睦まじく、幸せそうな母子四人の家族。


 いや、四人は家族であって家族ではない。



 ―――今は、まだ。



 佐川雪枝ゆきえ雪人ゆきとの母子と、相本あいもと美里みさと・アカネの母娘。


 二組の親子が同居する家。





 雪枝と美里の母二人は、本当の家族になりたいと、そう願っていた。


 だが、現代ではそれを正当に成すには、まだ、あまりにも敷居が高過ぎる。


 故に、二人は、永い時をかけてその夢を叶えるための道筋を考え、実行する。




 

 百合の母達が、自らの子等に、乞い、願う。



 子等もまた。



 母達の想いを聞き届け、その願いを叶うべく、愛を育む。



 そんな、極々、小さな二つの『家族』が、一つになるまでの、物語。





 『百合の母達が子等に乞い願う・純(ピュア)』






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