幼なじみの美少女天才探偵に助手の俺が「恋人が欲しい!」と依頼を出したら焦りはじめた話

伊良(いら)

第1話

小鳥の声で目が覚める。時計を見ると6時を少し過ぎた頃。まだ眠たい目をこすって洗面所に向かった。


僕の名前はワトソン。僕は縁あって探偵の助手をしている。


助手の仕事は朝ごはんを作るところから始まる。ラジオをつけてから、卵を探しに冷蔵庫を開けた。


『今、話題になっている高校生探偵についての話題です。また難事件を解決しました。犯人は中年の……』


そうそう。この事件だ。これはうちの探偵が解決した。今では新聞やラジオ、テレビでもよく放送されている。彼女はテレビ等には顔を出さないのだが、勝手に写真を取られたりして出回っているのだ。


『こんなに頭を賢くて美人だなんて素敵ですね』


彼女が目立っているのはこの理由もある。彼女は美人なのだ。それに目立つ白髪である。

とても綺麗なシルクのような髪。


卵焼きが焼けた匂いがする。俺は急いで卵を見に行く。焦げていたらうるさいのだ。


探偵助手のお前がなんでそんなことをしているのかって?これも助手の仕事なんだよ。俺は使えない助手だからこれくらいしないと折り合いがつかないのだ。


階段を降りる音がする。規則正しいリズムが彼女の起床の合図だ。


「おはようごさいます」


先程、紹介した綺麗な白髪は寝癖ですごいことになっている。ぴょこんと跳ねた後ろ髪を気にするようにながら、ダイニングテーブルに座った。


「おはよう、シャール。今日からは高校生活に復帰だね」

「そうね。私は行きたくないんだけれど君が言うから」

「いくらシャールが賢くても高校は卒業しておいた方がいいんだよ。何があるか分からないしね」


俺がそう言うと、シャールは卵が上に乗ったトーストを齧りながら何かを呟いた。


「いや私はワトソンがいれば……うにゃうにゃ」


何を言ったかは聞こえなかったが、どうせ高校なんて行かなくていい的なことだろう。しかしまぁ、彼女と一緒にいたら毎日が刺激に溢れている。


それはそれで楽しいのだ。しかしやはり俺も1人の高校生。普通の生活とやらをあるんで見たいと思う。


世界に溢れている恋愛ドラマのようなものを期待している。俺が高校に求めるものはそれだけである。それにシャールを付き合わせているだけ。申し訳ない気がする。


「そういや、もう私に依頼は来てないの?」

「今は……来てない。まぁすぐに来るだろうね」

「まぁ?私は天才探偵だからね!どんな依頼でも解決してやるさ」


そう言って、砂糖がたっぷり入ったコーヒーを飲む。その事実を知らなかったら大人っぽい女性に見えるのかもしれない。


最近では彼女のガチ恋勢とやらを見た気もする。ちなみに俺はガチ恋勢でも何でもなく、ただの幼なじみとして接している。


「依頼が来てないと退屈だー!依頼がないと学校に行かなきゃだし」


そう言って行儀悪く、足をパタパタさせている。彼女は家ではこんなふうだが、外ではしっかりとしている。

そんな彼女を眺めながら一呼吸置いてから、俺は呟いた。


「じゃあ依頼、してもいいか?」

「してもいい?」


俺のつぶやきに同じ言葉を繰り返すシャール。まだ理解が及んでいないのだろう。ただ俺は依頼人として、彼女に依頼したいのだ。


「俺が依頼人ってことだ」

「えっ!?あ、あれだなぁ?洗濯物を干すのを依頼するとかだな?それは断る。名探偵の仕事じゃないからね」


そう言って、首を振るシャール。それは依頼じゃなくてもやってくれ。まぁ、俺が助手になってからやってもらったのことはないんだけどな。


「いや違う。俺の依頼は『俺の彼女を探してくれないか?』って言うことだ」

「だからぁ、洗濯物は……って、えっ!?」


驚いた拍子に、机に置いてあるコーヒーカップを倒しそうになる。それが持ち直したのを確認してから、シャールは俺に聞き直した。


「彼女を探して欲しい、だって?」

「あぁ。高校生だし、恋愛してみたいなぁと」

「えーっと、何かな?それは彼女が欲しいということかな?」

「まぁそういうことになるな。」


俺がそう言い切ると、シャールは何かごにょごにょと呟いてからもう一度、俺に向き直った。


「この名探偵がその依頼解決してあげよう!」

「おぉ!さすが!」


俺は食い気味に返事をした。やはり頼りになる。言ってみるものだな!


シャールに感心していると、彼女はふざけたような顔をしながら俺の手を握った。


「とりあえず、彼女の依頼は私にしとくっていうのはどうかな?」

「いくら、俺の依頼がめんどくさいからってそれはないだろ」


俺がそう言うと、シャールはパッと手を離した。『私にしとけよー!』位のツッコミが来るかと思ったが、やけに小さな声が返ってきただけだった。


「そう、だよね……。ちょっと考えてみる」


それだけを残して、シャールは自室へと戻って行った。最後の対応が少し引っかかったが、まぁいいか。


俺は久々の学校のための用意へと移った。


◆◆

カクヨム甲子園ロングストーリーの方です!

ランキング一位を取りたいと思いますのでどうか、星をください!









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