第4話「悪戯と護符」
トボトボと、痛むおしりを擦りながら黒髪美青年と共に本屋までの道を歩いていく。
澪菜「…なんで私が空き地にいるのが分かったんです?」
??「【後追イ】っていう追跡魔術を使ったんだよ、【後追イ】を掛ければ、相手の居場所まで真っ直ぐ進むだけ。楽だよね」
澪菜「え、いつ?」
??「君が僕に弱っちいチョップを喰らわせた時」
澪菜「……全力だったんですけど」
??「知らないね君の全力なんて」
澪菜(つまり私は知らない間にマーキングされてたのか…どこ逃げても意味なかったな…)
澪菜「ッていうか、名前教えてください黒髪さん」
??「さっきも思ったけどナニ?ヒトのことを頭の色で呼ぶとか失礼だよ?」
澪菜「ヒトなんですか?」
??「ヒトじゃなかったや」
澪菜「え…じゃあナンです?」
??「うーん…神」
澪菜「はい?」
??「だから、神」
澪菜「失礼ながら…自意識過剰ですk」
言い切る前に、金色の双眸に睨まれる。
え怖い…美形の迫力ぱねぇ…:( ; ◜ᴗ◝;):ガタガタ
澪菜「……神ってどういうことですか?」
??「神と言っても僕は【邪神】ってヤツ、ご都合良くて優しさ気取りのカミサマ達とは違うよ」
澪菜「え美形な邪神とかいるんですか?ゲームとかだとグロテスクな見た目で出てくるのに」
??「…見たイ?」
さっきまで人間らしい美声で話してたのに、笑顔は全く崩すことなく、
何重にも重なったような声でそう言われた。
背筋に冷たい汗が伝う、全身の産毛が逆立って足が動かない。重圧を掛けられたような感覚がした。
澪菜「…ッ…け、結構です……。てか、名前!」
「とにかく話を逸らしたい」と思って、
名前のことを思い出したのでここで聞く。
??「え〜好きに呼べば?」
澪菜「…黒髪さん?」
??「ヘッドロックかますよ?それともさっきの井戸に放り込んで」
澪菜「まさかの文句!?好きに呼べって言ったのに!」
??「うーん…確か、日本では現凪 祢遠(アラナギ ネオン)って名乗ってるよ」
澪菜「…地味にかっこいい…ん?日本では?」
祢遠「海外とかにも行くからね…最近は行ってないけど」
澪菜「ほへー…さっきはありがとうございました…」
祢遠「急にしおらし…別に、宿を提供するっていう条件付きだからね」
澪菜「……あそこで断ってたら…?」
祢遠「今僕の隣歩いてないんじゃない?」
澪菜「ヒエッ…あの、家着いても文句言わないでくださいね」
祢遠「言わないよ、多分。…あ、そうだ、これ渡しておくよ」
澪菜「?なんですかコレ?」
祢遠が渡したものは、三枚の御札だ。
読み解けない古代文字の様なモノが
びっしり書き連ねられている。
祢遠「護符、しかも僕特製の魔力付き!ここまで神に庇護してもらえることは珍しいんだからね?」
澪菜「…なんか呪われそうで怖いんですけど」
くれた相手が清い神なら「ありがたや〜」なんだろうけど、邪神から貰った物だから怖すぎる。
祢遠「捨ててもいいけど?本屋の前に跋扈(バッコ)している邪霊達に喰われてもいいなら?」
澪菜はピタリと足を止める。
澪菜「…本屋に霊が?え…なんでそんなとこに向かってるんです?」
祢遠「君が異界の住人だから、邪霊が興味持って肉体を奪いに来てるんだよ…君は本屋からこちら側に来たから、本屋からじゃないと帰れない。
店主は今頃迷惑してるだろうなぁ…」
澪菜「ッうぐ…」
祢遠「僕と店主に協力する?」
右隣を歩いていた祢遠が左手を澪菜に向かって差し出す。
澪菜「……します…」
伸ばされた手を、澪菜は『確認しないで』取った。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
澪菜「…え?」
澪菜が繋いだと思った手は、生暖かく、ゴツゴツした感覚の手だった。
ふと隣を光速で確認する
澪菜が握っていた手は、道行く黒い人型の影の手だった。
祢遠が隣を通った黒い人影の腕を引っ掴んで澪菜と手を結ばせていたのだ。
バチンッ!!と強烈なビンタのような音が響く。
澪菜「ッうぎゃああ!!!」
静電気の様なモノが右掌に走る。
その場に似合わないような笑い声が聞こえる。
澪菜「笑い事じゃないでしょ!?」
黒い影はユラユラ揺れて、何事も無かったかのように夜道を歩いていった。
祢遠「どうだい?今のが護符の効果、信用できた?」
笑いながらそう言ってきた。
澪菜(ッコイツぅ!)
澪菜「ッ信用できました、これを貴方に押し付ければ仕返しできますよね?」
祢遠「出来ないよ?僕には効かないように細工してるから」
澪菜「ッホントにちゃっかりしてますね!!」
皮肉げに言い放ってから1人ズンズンと大股で本屋への坂を下りる。
祢遠「どこ行くの?そっちじゃないよ?」
澪菜「ッ〜!!」
大人しく祢遠の後をついて行くことになった。
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