草加奈呼

第1話 蚊


 最近は、夜も暑いため、私は窓を開けて寝ていた。

 もちろん、網戸はガタつきもなく、網はしっかりと貼ってある。

 この間叔父に破れた網を修復してもらったばかりで、 なんでも黒い網戸は虫が寄り付かないと言っていた。


 さらに、家にはG(自主規制)やアリ、ハエなどの類はよく出現したが、 「蚊」なんてものは今までに滅多に入ってきたことなどなかった。



 ……はずなのに。



 昨夜、私は風邪で寝込んでおり、暑さと痒さで夜中の1時に 目が覚めた。


 何か痒いと思ったら、腕と足に、合計4箇所も蚊にさされていた。


 今まで2階に蚊など入ってきたことがないというのに。

 油断していた。


 あの、忌々しいモスキート音にも気づかないくらい眠っていたのだろう。


 そういえば、1階にノーマットタイプの蚊取器具があったなと、私は1階の物置きを探った。



 本体のみ。液なし。



 まったく、まったく役に立たん。



 まあ、滅多に使わないものだから仕方ない。

 その日はあきらめ、再び就寝することにした。



 しかし、この部屋にはまだ蚊が潜んでいるということだ。

 電気をつけて少し辺りを見回してみると、ちょうど寝台のそばの壁にそれはいた。


 白い壁に止まっていたため、とても目立っていた。

 蚊自体は、そんなことを気にもしていないのだろうな。


 私は、すぐさま蚊をつぶさないように軽く叩いた。

 こんな軽い力でも死んでしまう蚊の命とは、 いったい何なのだろう。


 私は、蚊の姿をじっと観察するように見た。




 ……こんなに腹の部分が赤く膨れ上がっている。

 それは、こいつ1匹で私の体を4箇所刺したことを物語っていた。


 さぞ、満腹で満足だっただろうな。


 しかし、こんな病人の血を吸わなくてもいいだろうに。




 そう思いながら、私は蚊をティッシュにくるんで

 ゴミ箱に捨てた。

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草加奈呼 @nakonako07

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