第49話 夢の中、前世の記憶
夢の中
思い出される前世の記憶。
そしてこれはきっと夢の中なのだろうと自覚する。
眠りが浅かったからだろう。
鮮明に夢だと捉えられる。
まあ、それはいいとして、俺の目の前には幼い前世俺の姿が写っていた。
俺はそれを眺めながら、前世の記憶を思いだし始めた。
物心ついたときから、何かに没頭するのが好きだった。
幼稚園に通っていたときに絵本にハマり、その園に置かれていた全ての絵本を読み尽くして、さらに他の日本発の有名な絵本も読み尽くしたが、それでもなお満足しなかったため、有名な海外の絵本すらも読んだ。
勿論、有名な海外の絵本を読むために、ほぼ全ての言語を幼稚園児のときに習得した。
これが始まりだったともとれるだろう。
そして幼稚園を卒業したとき、俺の絵本ブームは突然終わりを迎えた。
そこらの大人よりも圧倒的な程の絵本への知識は、これ以上絵本を理解し得ないことを示していた。
大人に聞いても分からないとしか答えない。
そればかりか俺の事をよく知ってるねと褒めるばかり。
そして俺の絵本に対する興味はなくなった。
小学生になった。
勉強が始まった。
そして当時の俺は、この時初めて自分の事を1つ理解した。
俺は楽観視していたのだ。
勉強は大変と、大人達は口をそろえて言う。
だが俺は幼稚園時代、大人に圧勝できる絵本の知識を持っていた。
なので勉強がいくら大変であろうとも、俺が没頭すれば余裕なのであろうと、そう思っていた。
だが違った。
俺は嫌いなことがあったのだ。
それは、やらないといけないことだ。
強制的にやらされるものが、俺は大嫌いだったのだ。
そして俺は思い返した。
よくよく考えれば、俺は大人は至福と言っている睡眠は大嫌いだったし、食事だって大嫌いだった。
別に嫌いな食べ物があった訳じゃないし、胃袋が小さかった訳でもない。
ただ単純に、食べなきゃ生きていけないという事が嫌いだったのだ。
やらないといけないことは、俺は小さいときから嫌いだったのだ。
だが絵本は違った。
絵本はやることだった。
強制ではない完全なる自由。
やるもやらないも俺次第。
そこに惹かれていたのだなということを、俺は小学校で学んだ。
そして俺は、何も没頭するものが見つからない、とてもつまらない6年間を過ごし、中学生になった。
そして俺はそこで出会った。
ゲームに。
そこからの人生はまるで天国のようだった。
今までがつまらなさすぎたこともあり、俺はとても充実した日々をおくった。
やり込み要素の強いゲームを探してはやり込み、また別のゲームを探す。
この繰り返しをどれ程したのかは俺ですら覚えていない。
ただ楽しかった事は覚えている。
まあ、嫌いだった食事と睡眠を忘れることができるという名目でもゲームをしていたため、慢性的な睡眠不足と栄養失調になって4回程病院に入り、三途の川を反復横飛びすることになったのはご愛嬌だ。
そして時が経ち、俺は受験生になった。
それは今までの人生の中で一番の地獄だった。
ゲームをしてはならない、勉強しろ。
やることをするな、やるべきことをしろ。
言っている事は分かるしそうするべきだとは思っていた。
なので勉強を頑張った。
だが気が狂いそうだった。
マジで鬱になりかけた程だ。
それでも俺は乗り越えた。
そして無事まあまあいいところな高校に合格した。
そして俺は、1つのゲームに出会った。
迷宮と一人の英雄
それは俺に対する神様からのご褒美だと思った。
受験期間中に発売されたことを除けば完璧なゲーム。
そのやり込み要素は絶大の一言にまとまった。
そして俺は、そのゲームに1年を賭けて完全クリアした。
そしてクリアしてから5ヶ月経ち、近道をした罰なのか知らないがパイプの下敷きになり、俺は転生した。
これが俺の前世だ。
正直ろくでもなかったのは自覚している。
ただ俺は、この世界に転生できたことから、意味のある人生だったのではと最近は思っている。
そして俺がそう思っていると…
………………そろそろか。
俺はあと少しで起き上がることを本能的に理解する。
どうか、いい目覚めでありますように。
そう祈りながら、俺は光に包まれていった。
★★★★
現実
「んー、朝か~」
俺はカーテンの隙間から降り注ぐ光で起床した。
そして俺は、夢の内容を思い出す。
「前世かぁ~」
まだまだ鮮明に夢を思い出せることに、俺は眠りが浅かったことを改めて自覚する。
そして俺は、ダンジョンウォッチで時間を確認した。
すると…
「やっべぇ!!今から全力で用意したらギリ間に合うか!?」
夜遅くまで起きていたので、こんな時間に起きたのだろう。
これは天罰だなと思いながら、俺は歯磨きをしに洗面所に行った。
間に合うかな?と思いながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます