「妄想と青春」の狭間で
茶らん
第1話 妄想が激しい青年
キーンコーン カーンコーン
おわ、もう鳴った。
これがいつも俺の妄想を終わらせてくるチャイムの音だ。
「せっかく、いい所だったのに。」
小さく溜め息をつく。そんな俺はこの後、昼飯を買いに行かなければならない。
めんどい〜…
次は大きく溜め息をつく。ゆっくりと重い体を立ち上がらせる。
「なあ、この後一緒に庭で食べないか?」
「えっ…!い、いいよ?誠也(せいや)」
俺の目の前でイチャイチャしているのは、この教室で初めてできたカップル。
俺の目の前で好き放題しやがって!ったく。
しかし、席順的にしょうがない。座席順は名簿番号順になっているのだから。俺の目の前は倉田真美(くらた まみ)という女子で、俺は古宮慎(こみや まこと)つまりだ、名簿番号順になると俺より前になるのだ。最悪なことに、このクラスには「け」から始まる苗字の人がいない。
「はあ。」
またため息をつく。それに反応したかのように、前のカップルが俺を見た。
「なんだ?慎?ため息なんかついてよ」
誠也が言った。俺はこんな二人と関わりを持ちたいとは思っていなかったため、
「別に〜。ちょっと、疲れただけだわ。」
俺はそんなことを言って、その場から立ち去った。
その時、ピコーンと閃いた。
あのカップルが突然と悪魔に攫われて、学校中が騒ぎ、先生や警察すらも手出しできない状況。そこで俺の登場さ!んで、俺はその悪魔と–−−
「ぎゃあああああ!」
とんでもない声が廊下に響いた。声がした方にみんなが振り向き、見ていた。教室にいた人も、とにかく全員、見ていた。
「一体、何が…って、、、え?」
黒い物体がゆらゆらとして、こちらにやってきた。
「え?」
俺が妄想した通りの姿の悪魔だった。
「え?」
そして、その悪魔は俺の横を素通りしていった。
「え?」
俺は圧巻として、その状況を見ていた。
「嘘だろ?」
俺はぼーっとして、いた。
「おーい!ま、こ、と!」
誰かに抱きつかれた。
「ぎゃあああああああああああああああああ!」
俺とは思えない声を発する。廊下や教室にいた人のほとんどが俺を見ていた。
「ぷっ、あはは!おもろいな〜お前は。相変わらず!」
後ろを振り向くと、中学生の頃から一緒の秀英(しゅうえい)がいた。
「え、あれ?もしかして…妄想が激しすぎた?」
「ぷっ、お前、また妄想してたのかよw」
「あは、はは…」
「おもろいな〜、てか、俺をおいて昼飯買いに行こうとしてんじゃねえよ!」
「ご、ごめんて…」
俺は、たまにあるのだ。俺が作り出した人物が現実世界に来たかのようになる妄想が。これは俺がやっているわけではない。俺は脳が勝手に作り出していると思っている…
「全く、あんな大声出さなくてもいいだろ…」
秀英が言った。俺は確かにな。なんて思いながら、食堂に向かった。
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