放課後
秋の夕晴れ。
四年前に入学した大学(の放課後、帰路)、下校中。
ううん、いいや、もう。
我が家に向かう、住宅街の少し細い道。今日は久しぶりに自由に帰ってみるつもりで、学校を出て歩いている(、帰路)。
ああ、もう!わかったよ、帰路帰路うるさいな。
こんなにスッキリと心地が良い気候なのに、何故か私の心は重い。やはり一人暮らしのプレッシャーだろうか。実家を出てからずっとほんのり緊迫感が付き纏うのだ。自由は好きなんだけれど。
でもわざとそのせいにするくらい、なんとなく他の理由もあるのだ、でも自分に原因があるから見て見ぬふりをする。一年の留年は思ったよりも私の理想を、予定を砕いた。自分に厳しいのだか甘いのだか分からない私は休みの日に休む気にもなれず、最近はずっとただでさえある緊張感のそのまた上乗せをしていた。
広い道に出たので、真っ直ぐの大通り、左側の歩道を進む。
あともう一つ。私には私以外の、いわば反射とでも表現できるような思考も付き纏っている。だから私の本筋とは別物のようにくっついてくる、あいつだ。さっきの考え出しだって、あんなに帰路を連発するつもりはなかったのに、あいつがやった。
まあそんなの全て、頭の中や独り言なんかで完結する話だから、こいつを消そうとは思っていないし、むしろそれも私だなぁとかなんとか受け入れているから良いのだけれど。いつだって頭の中はこんな調子だし、もう慣れたもんなのだけれど。でもたまには悶々とする、という話だ。ちゃっかり、検索で辞書を引こうとして電卓アプリを立ち上げるというような共動作について、私はこいつのせいにさせてもらっているし、正直ウィンウィンかな。(こっちの意見も聞かずに)
どうせなら会話でもできたらいいのに。(僕の声を聴いてよ。…あれ?どうして僕に意思があるの)
こんな調子でボーっと歩きながら、いくつかの交差点を青信号多めで過ぎていると(青信号少女の真髄だな)、見慣れない店に目と足が止まった。
「こんなお店、あったっけ」
周りに人が居ないと、つい思ったことらが口をついてそのまま出てしまう。深い緑色、額縁みたいな佇まい。
「最近できたんかなぁ」
重厚感のある木造りだけれど、塗装は綺麗だった。____店内に悟られないように、そぅっと小窓に近付く。店内は暗そうで、(もしくは窓に細工があって、)なにがあるのかよく見えない。
その時ふと後ろから、呼ぶ声がした。
《僕の声を聴いてよ》
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