15話 ロールプレイング③

 私は書き起こした台本を手に桜井先生に問いかけた。

「事件当日のこと、ここに書いてある通りで間違いありませんか?」

「ああ! 間違いない」

 桜井先生は我が意を得たりと大きく頷いた。

「だそうですけど、水瀬先輩」

 待ってましたとばかりに水瀬先輩が鼻を鳴らした。軽い足取りで桜井先生の前にやって来た水瀬先輩はニッコリと微笑んでいる。

「桜井先生、一応、確認しておきますけど男に二言はありませんよね?」

「え、何だよ、何が言いたいんだよ」

「いえ、ちょっとダメ出しをしたいなと思っているんですが、その度にコロコロ発言を変えられたら面倒なので」

「ダメ出し?」

 桜井先生が目を白黒させる。

「そうです。早速いいですか? 先生が美術室に入ってくる所から始めましょう」

「ちょっと待て、やるなんてーー」

「そうですか、じゃあ桜井先生はそこで見ていてください。葉月君、頼む」

 あっさりと桜井先生の拒否を受け入れた水瀬先輩は私に言った。

「桜井先生の動きを台本通りに演ってくれたまえ」

 私は頷き、美術室の外に出た。

 自分が書いた台本だ。見なくても、どう展開していくかはわかっている。

「じゃあ、いくよ。ーーサン!」

 水瀬先輩の掛け声とともに一拍手が響いた。

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