No04『虫取りするガキをニコニコしながら眺めるお姉さんの謎』 春海水亭
※講評内で作品の内容に触れております。
致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、
一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。
ご了承ください。
◇◇◇
https://kakuyomu.jp/works/16817330661255666536
この作品はホラーです。
同時に「なぜお姉さんは虫取りするガキをニコニコ眺めているのか」という謎に明快な解答が与えられる、よく出来たミステリーでもあります。
Jホラーの世界では「ただ立っているだけの幽霊が一番怖い」というメソッドが存在しますが、そもそもが何をするでもなく、無関係な人間がただ立っているという状況は恐ろしいものです。
「正体不明」は恐怖を喚起します。
「意図も不明」なら尚のこと。
さらに――お姉さんは、ニコニコと笑っているのです。
本作における「なぜ?」のホワイダニットは、俗に「赤毛トリック」と呼ばれる原理の応用に当たります。
これだけでも、我々が生きる人間世界に起こりうる事件の解決としては完成しています。
まさに快刀乱麻、明快な解答と言えるでしょう。
ところが……この物語はそこでは終わりません。
「ホラー風味のミステリ」には、しばしば、ある種の欠点が指摘されます。
それは「明快な解決が成されることで、ホラーとしての恐怖が減じてしまう」という作用です。
ホラー……恐怖とは、正体不明、意図も不明だから怖いもの。
わからないからこそ――恐い。
さて、あらためて確認しましょう。
この作品はホラーです。
「なぜ?」には答えが与えられました。
それでも、この恐怖が減じることはありません。
否……知らなくてもいい「答え」を知ったことで、より薄暗い小道へと、ガキは足を踏み入れることになったのかもしれませんね。
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