ゼロかイチか

龍神雲

ゼロかイチか

 ゼロからのスタートと最初からイチある状態からのスタート。イチでもあればゼロよりは良い条件が揃ってスタートがきれる。ボウリングで言うならば、最初からハンデがある状態とない状態とでは全然違うということだ。ちなみに俺はいつもゼロスタートだ。イチという条件を付加しようと思えばできるが、それでは意味がないからだ。言うなればイチスタートは目を曇らすと考えている。言うなればイチスタートは卑怯だと考えている。言うなればイチスタートは自分の為にはならないと考えている。言うなればイチスタートは今後の未来の危うさその物だと考えている──そう、つまりはイチながらもマイナスとしか思ってないのだ。これが偏見以外の何物でもないと理解しているが、撤回しようとは思わない。だがそう思いながらも時折、無性にイチが欲しくなる。イチの魅力ははっきり言って半端ない、何なら直ぐにでも飛びつきたい──しかし、葛藤に負けたら終わりだ。


 ──そこまで考えるものかねぇ……。だってみ~んな、いや、今じゃ世界中で普通に使われてるじゃん?お前も使いなよぉ?


 俺の中の悪魔が語り掛けて誘惑してくる。確かに魅力的な物だが、そこは相容れない。


「俺は使わないでやってやるんだ!」


 それから一週間が経過した。俺は普通にイチスタートが切れる物を使用していた。背に腹は変えられない……これは必要ツールだ……そう、俺は何も間違っちゃいない……何も間違っちゃいないんだ……



 みんながやっている、世間がやっている、それが普通で今の在り方だから──……


 そして俺は二度と、ゼロスタートは切れなくなってしまい、信念と自我を失った──

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