第3話 追加のお届け物です
ある日、ベッドの上ですやすやと寝ていた男児が日付が変わった夜中にカッと目を覚ます。
「ん? 俺は……あ、そうだ! 確か転生した時に『三歳になったら』と言っていたな。ってことは、俺は今三歳になった……と、いうことか。あ! ガッ……グギギ……」
その男児は横になったまま目を開けると、この世界に転生した時のことをそう言えばと思い出した瞬間に途轍もない頭痛に襲われた。
「ハァハァ……なんだよ、聞いてないぞ。でも、今ので生まれてから今までの記憶と転生する前の記憶が融合されたのが分かる。でも、相変わらず名前とか個人的な情報だけは思い出せないんだよな。多分、あの土下座女神が何かしたんだと思うけど……」
頭痛もなんとか治まりベッドの上で上半身だけ起き上がると、男児は自分の記憶を検証し始めた。
「えっと、取り敢えず俺の名前は……ラフィ 三歳と0ヶ月。一人称は『僕』かぁ~まあ、三歳じゃ俺も変か。注意しないとな。他には……」
男児であるラフィが検証して分かったことは、ティグリア伯爵家の三男として転生してきたことで名前は『ラフィ・フォン・ティグリア』であること。あの女神に貰った異世界転生特典は『鑑定』『
「何がチクッとだよ。確か、あの時痛みで気絶したんだよな。もしかして、『ステータス』って言ったら……おう、見れた。何々……」
ラフィがステータスと唱えるとラフィの眼前の空中に文字が列記されている半透明なボードが表示された。ラフィは思わず手を出すが、そのボードには触ることは出来なかったが「ま、こんな物か」と納得し、列記されている内容に目を通す。
名前:ラフィ・フォン・ティグリア 三歳 性別:男
取得スキル:鑑定EX、
加護:一級神フィリア
称号:一級神フィリアの使徒
「ふ~ん、体力とかのレベルは見られないんだ。で、スキルの横がレベルなんだろうな。ん? 加護ってある。これは多分あの時ちゃんと対応してくれた女神さんかな。だよね、あの土下座女神は何もしてくれなかったし」
『あ、起きてたよ。なら、ちょうどいいね』
『ホントだ。起こす手間が省けたね』
「え?」
『『え?』』
突然、ラフィの頭の中に響いたのはどこか甲高い声だったが、不思議と嫌いにはなれなかった。
『あ~突然ゴメンね』
『あのね、ちょっと異世界転生特典がしょぼかったかなと思ったのと、今のままじゃ他人にバレる可能性があるから、急いで来たの』
『そうなのよ』
『『ねえ~』』
ねえと言われても当人のラフィには人の頭の中で何を言っているんだとしか思えない。
なので、頭の中で姦しい人達に話しかけてみる。
「それで結局はなんの用なの?」
『あ、そうよね。説明不足だったわね』
『ごめんね。えっと要はね、補填に来たの』
「補填?」
『そう、補填よ。やったね!』
『ね、嬉しいでしょ!』
「……」
ラフィは頭の中で勝手に話す人達にそんなのはいいから、早く説明してくれと願う。すると思いが通じたのか、やっと説明タイムに入る。
『あ~ごめんね~前置きが長かったよね~じゃあ、寝てしまう前に私からはこれ! なんと『魔法創造』をプレゼントしちゃうわよ~ちゃんと注意書きを読んでから使ってね~』
『私からは~これ! ジャジャン! 『スキル創造』よ。これも注意書きがあるから、ちゃんと呼んでから使ってね~じゃあ、準備はいいかな?』
『チクッとするからね』
「え? まさか、またアレなの……」
ラフィは頭の中で『チクッとするからね』と言われ、転生して来たばかりのことを思い出す。また、あんな痛い思いするのなら、いらないと言おうとするがこちらの気持ちを無視して頭の中でずっと話し続けている女神っぽい何か。
『心の準備はいいかな~って待たないけどね。じゃあ……』
『『せ~のスキル注入!』』
「あ……」
また、襲ってきた痛みにラフィは耐えられずに気絶してしまう。
『あ~ダメだったか』
『ごめんね。でもね、あなたには強くなって守って貰わないとダメなの』
『そうなのよね~私達が干渉できるのは、あなたみたいな使徒相手にしか出来ないの。大変だけど頑張ってね』
『じゃ、行こうか~』
『うん、行こう』
翌朝、ラフィを起こしにラフィの寝室へと入ってきた侍女が目にしたのは、余りの痛みに両手で頭を抑え、そのままベッドに倒れ込んでいたラフィの姿だった。
直ぐに気絶したのがよかったのか、ラフィがベッドから落ちることがなかったのは不幸中の幸いだろうか。
「おはようございます。ラフィ様」
「う、う~ん。おはようジュリ」
「洗顔の準備は出来ておりますので、先ずはそちらからお願いします」
「うん、ありがとう」
ラフィは昨夜起きたことが夢や嘘ではなかったことを思い出す。それは何故かといえば目で見た物を『鑑定』したいと思っただけで、その思いに対しラフィの視界にその情報が表示されたからだ。それに転生以前の日本での記憶も残っている。但し、本人の個人情報は全くだが。
これらのことから、夜中に起きたことは全てが真実で、どうやら二人の女神が異世界転生の特典の補填をしてくれたことを思い出す。
ラフィは顔を洗いながら、『ステータス』と頭の中で唱えると、昨夜確認した自身のステータスボードに項目が増えていることが分かった。
名前:ラフィ・フォン・ティグリア 三歳 性別:男
取得スキル:鑑定EX、
加護:一級神フィリア、二級神サリア、二級神ソニア
称号:一級神フィリアの使徒
「あ~これが昨夜の騒がしい二人か、でもどっちがどっちなんだろ?」
すると、『鑑定』が働き『一級神サリア 主に魔法全般を担当している。サリアが認識、及び許可していない魔法は発動出来ない』と表示されたので、ラフィは魔法創造をくれたのがサリアで、スキル創造がソニアであることがなんとなく分かった。
「あれ、でもこのままじゃマズいよな」
ラフィは昨夜の女神のどちらかが『バレるとマズい』と言っていたのと前世でのラノベ作品を思い出し「試してみるか」と『隠蔽』スキルの取得を願うと『許可されました』と頭の中で聞こえた。
「あ、そう言えば『使う前に注意書きを読め』って言われてたっけ」
ラフィは不意に思い出したのだが、その『注意書き』がどこにあるかが分からない。どういうことだと『スキル創造』を見ていると不意に目の前にボードが表示され、そこに書かれていた内容を読んでみる。
『スキル創造は欲しいと願ったスキルが手に入る。但し、スキルを新しく創造する場合には、そのスキルの使い方などに対し二級神ソニアの承認が必要となり承認されれば取得希望者のスキルとして二級神ソニアより授けられるが、最初のスキルレベルはFレベルとなる。また。二級神ソニアが既知のスキルの場合には何事もなければ、そのまま取得希望者に対し授けられるが、最初のスキルレベルはFレベルとなる』
「じゃあ、確認してみるか」とステータスボードを開いて見ると、そこには『隠蔽』スキルがちゃんと追加されており、そのスキルランクはFだった。
「あ~注意書きの通りにFレベルだ。でもこれって鑑定持ちの人なら直ぐにバレちゃうんじゃ……あ、そうだよ。じゃあ、もう一つ『スキルレベル必要経験値最小化』」
ラフィが『スキル創造』を使うと『使用用途が欠けています』と眼前に表示されたので、ならばとラフィはどう使うのかを二級神ソニアに対し説明するように呟く。
「えっと、『全てのスキル取得のレベルアップに必要な経験値を一とする』で、どうかな」
すると『その使用用途では承認することは出来ません。使用者制限を設けて下さい』と表示されたのを受けてラフィは「取得希望者『ラフィ・フォン・ティグリア』以外の使用は禁じる」と付け加えたところ『承認しました』と表示されたのを見てステータスボードを確認すると『スキルレベル必要経験値最小化F』が追加されていた。
ラフィは早速『スキルレベル必要経験値最小化』を使用し表示されているステータスボードの隠したい項目を指で触ると『隠蔽しますか? YESorNO』と表示されたので、『YES』を選択する。
すると、ステータスボード中の項目が薄く表示された。
名前:ラフィ・フォン・ティグリア 三歳 性別:男
取得スキル:鑑定EX、
加護:一級神女神フィリア、一級神女神サリア、一級神女神ソニア
称号:【一級神女神フィリアの使徒】
※【】内の項目が薄く表示されている項目だと思って下さい。
「あ! 『隠蔽』のレベルが上がっている。じゃあ、この調子で「ラフィ様?」……あ、すぐ行きま~す」
ラフィが洗顔からなかなか帰って来ないのを訝しんだ侍女がラフィの名を呼ぶので、ラフィも検証はここまでと侍女の元へと向かう。
「でも、『強くなって守る』って言ってた様な気がしたけど、それは一体どういうことだろう?」
「どうかしましたか?」
「なんでもない……ハズだよね」
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