桜梅桃李
大和成生
第1話 雪の女王 【side 季】
従姉妹が7人もいたから小さい頃はみんなで良く遊んだ。女の子ばっかりで、男の子は石田の家の信ちゃんだけ。
お母さんは三人姉妹の末っ子で、長女の砂川のおばちゃんとこには藤子ちゃん、桐子ちゃん、菫ちゃんの三姉妹。
次女の石田のおばちゃんのとこは桜ちゃん、梅ちゃん、桃ちゃん、信ちゃん。
そして末っ子の岩下家、つまりウチのお母さんのとこは、お姉ちゃんの杏と私。
本家の砂川の家で昔は良く遊んだ。藤子ちゃんと桐子ちゃんはもうお姉さんだったから、あんまりしなかったけどごっこ遊びが好きだった。
従姉妹はみんなキレイで可愛くてお姫様が似合ってた。だからいつもお姫様が出てくる話ばっかりやった。シンデレラ・白雪姫・眠り姫・人魚姫・かぐや姫も。
私はいっつも王子様役になった。小さい頃は結構背が高かったし、身体が横に大きかったから、どのお姫様も似合わなかった。独りだけ男の子の信ちゃんは、一番年下で王子様の役が出来なかったし。
梅ちゃんもいつも王子様をやりたがった。でも梅ちゃんは、顔はキレイでカッコ良かったけど背が小さい。だから私が王子様。
「たまにはスーちゃんもお姫様やったら良いのに」
桜ちゃんがいっつも言うてくれたけど、お姫様はキレイな方が良い。
みんながお姫様の方が本当の事っぽいし、その方がごっこがごっこじゃないみたいで楽しかった。
梅ちゃんはお姫様ごっこがあんまり好きじゃないから、いつもムスっとしていた。
梅ちゃんのお姫様、キレイやのに。
梅ちゃんのお気に入りは「雪の女王」だった。
確かに梅ちゃんは「ゲルダ」にピッタリだ。雪の女王にさらわれた「カイ」を独りで助けに行く、カッコ良いゲルダに。
雪の女王での私の役は「山賊の娘」
梅ちゃんはそれが私にピッタリだと言った。
「アタシ、この話の中で山賊の女の子が一番好きや」
梅ちゃんはそういって、
「スーちゃんみたいやもん」
と笑った。
ガサツそうなとこは似てるな、と思った。
私はゲルダが好き。梅ちゃんみたいなゲルダが一番好きだ。桃ちゃんはいつも雪の女王をやりたがった。一番強そうだから。お姉ちゃんと菫ちゃんは王子様と王女様で、信ちゃんは「カイ」。桜ちゃんはみんながやらない役を全部やってくれた。
私も雪の女王ごっこが一番楽しかった。
ごっこ遊びはだんだんしなくなったけど、私の中で梅ちゃんは今でもゲルダだ。強くてがんばりやのゲルダ。お姫様をやりたいと思ったことはなかったけど、ゲルダにはなりたいなぁといつも思っていた。
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