駄菓子屋
口羽龍
駄菓子屋
聡太(そうた)は友達の家から帰る途中だ。先月から始まった夏休みは、宿題で大変だけど、それ以上にみんなと遊べるので楽しい。今日は友達の家でテレビゲームをしてきた。長い夏休みなのだ。思いっきり遊ぼう。
夕方だというのに、まるで日中のような日差しだ。まだ日暮れじゃない。そして暑い。毎日暑い日々が続いていて、雨が何日も降っていない。でも、それが夏なんだと思うと、つらいと思わない。
「今日も疲れたなー」
聡太は自転車で帰り道を走っていた。日差しが強くて暑いけど、帰ったらアイスが食べられる。もう少し我慢しよう。
道を歩いている人はそんなにいない。あまりにも暑くて、みんな家の中で冷房にあたっているようだ。とても静かな帰り道だ。
と、聡太は帰り道で駄菓子屋を見つけた。朝、ここを通りかかった時には、その駄菓子屋はなかった。急に建てられたんだろうか? それとも、幻だろうか? よくわからない。
「あれ? この駄菓子屋は?」
聡太はその前で立ち止まった。駄菓子屋は古めかしい建物で、まるで昔からここに建っているような見た目だ。
「最近できたのかな? でも、古そうだな」
聡太は首をかしげた。本当にここに昔からあったんだろうか? 夢でも見てるんだろうか? いや、現実だ。
「ちょっと駄菓子を買って帰ろう」
聡太は気になって、ここで少し駄菓子を買って帰る事にした。少しお金は持っている。ちょっと買っても問題ないか。
聡太は店の前に自転車を止め、駄菓子屋に入った。そこは中も古めかしく、何年も前にタイムスリップしたような気分だ。
「えっ、ここ、どこ?」
聡太は中に入った時、身が震えた。ちょっと冷房が効きすぎじゃないかな? だけど、エアコンがどこにも見当たらない。どうしてこんなに涼しいんだろう。
「やけにひんやりするなー」
と、聡太か後ろから誰かに肩をかけられた。聡太は後ろに誰かがいるのに気づかなかった。
「あら、人間さんじゃない」
聡太は振り向いた。そこには女の顔がある。だが、よく見ると、首が長く伸びている。これは、ろくろ首という妖怪だろうか? どうして妖怪がいるんだろうか?
「えっ、えっ、キャー! ろくろ首ー!」
聡太は思わず悲鳴を上げてしまった。目の前に妖怪がいるなんて。ここは現実じゃない。早く現実に戻りたい。
「怖がらないでよ。何も悪い事をしないんだから」
「う・・・、うん・・・」
だが、ろくろ首は優しそうな表情だ。悪い事をしない妖怪のようだ。聡太は少しほっとした。だが、妖怪はそんなに好きじゃない。早く帰りたい。
「ねーねー、これ買って帰ろうよ!」
と、聡太の隣に何匹かの河童がやってきた。彼らはとても楽しそうだ。まるで学校帰りの少年のようで、どこかかわいらしい。だが、聡太は彼らも好きになれない。
「か、河童!」
ふと、聡太は辺りを見渡した。聡太は驚いた。客がみんな妖怪だ。まさか、ここは妖怪が集まる駄菓子屋だろうか?
「何だここは? まさか、妖怪が出る駄菓子屋?」
聡太は焦り始めた。とんでもないところに入ってしまた。早く出ないと。だけど、せっかく来たんだから、何かを買わないと。何を買おうかな?
「早く出たいな。でも、何かを買わないと」
悩んだ末に、聡太はうまい棒を購入した。適当でいいから、何かを買わないと。
「そうだな。これを買ってこ」
聡太は会計に向かった。会計には九尾の狐がいる。九尾の狐は優しそうな表情だ。悪い事をしそうにない。
「いらっしゃい」
聡太は買ったうまい棒を出した。そして、財布からお金を出した。九尾の狐は驚いている。それだけでもすごいんだろうか?
「ありがとうございました。人間なのに、ここに来るって勇気があるわね」
九尾の狐は笑みを浮かべた。聡太は驚いた。ただ、ここに来て買い物をしただけなのに、それだけで勇気があると言われてしまった。まさか、妖怪からこんな事を言われるとは。
「えっ、たまたま来ただけですよ」
聡太は少し照れている。妖怪に褒められるなんて。いつの間にか、聡太は妖怪が怖くなくなっていた。褒められただけなのに、どうしてだろう。
「恐れずにここに来たから、もう1つおまけしちゃうわよ」
と、九尾の狐はうまい棒をもう1つサービスしてくれた。まさか、もう1つもらえるとは。聡太はまた嬉しくなった。
「あ、ありがとうございます」
聡太は駄菓子屋を後にした。だが、振り返ると、そこには駄菓子屋がない。やはりあれは幻だったんだ。だけど、自分の手にうまい棒はある。少しの勇気で1つ買ったつもりが2つになったとは。勇気を出して踏み入れてみるのは、いい事だなと思った。
駄菓子屋 口羽龍 @ryo_kuchiba
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