妊娠そして出産~トラブル頻発、そして影~




 バロウズ公爵──もう一つの家族と再会して一ヶ月が経ちました。

「もう、子どもを作り、産むことができる体になりました」

 医師からそう診察された。

「アトリア、今までよく頑張りましたね」

 アルフォンス殿下が言う。

 副作用で熱だしたり、まぁ色々あったからかな。

「はい、有り難うございます」

「ただ、子作りするのは一週間後以降になるから、それまでしっかり体をやすめて下さい」

「はい」

「王族だから仕方ないとはいえ羨ましいな」

「分かりますわ、でもアトリアの地位もありますから仕方ないことです」

 レオンの言葉にミスティは同意しつつも仕方ないと受け入れている。

 他のみんなもそうらしい。

「ちょっと疲れてるので休みます、すみません……」

 まだ薬の副作用が抜けきっていない私はそう言って眠りに落ちた。



 何か物音がしたので目を覚ました。



 セバスさんが侍女を床に押しつけていた。

 床にはナイフが転がっていた。


「やはり出て来ますね、膿はまだ出きっていないと言うことですか」

「セバスさん?」

「ああ、相手は気絶させたので、連れて行きます」

 立ち上がりナイフを持つと仕舞い頭を下げて侍女を小脇に抱えて出て行った。

 そしてしばらくして戻って来た。

「いやはや、私が隠れていないといけないとは」

「やはり祝福されてないんでしょうか私は?」

「いえ、アレはただのダンピールの男が殿下をたぶらかし子どもを作るなんて許される訳がない! と思い込んで殺そうとしたので処分しました」

 さっきの侍女をアレ呼ばわりしてるよ。

「考えが古い輩ですよ、どうぞお気になさらず」

「はぁ……」


 それからもトラブル続きだった。

 私が寝ている間に私を殺そうとしたり、食事に毒を盛ろうとする輩が結構出たらしい。

 その為、セバスさんが専属になり、レオンが摘発する為に「目」を使うという行動に出た。


 レオンと、レオンのお父様は結構酷使されたらしいが、おかげで私に害なす者は全部処分できたらしい。

 人数もそこそこ減ったが。

 古くからいる人ほど私の存在があまり好ましくないようだった。

 新しい人ほど私の存在は当然の存在だと認識されていた。


 なので、レオンとレオンのお父様がかり出され人材補充もされた。

 隠蔽魔法も見抜ける二人の前では嘘は通じない。


 なので私に害なす人は居なくなった。

 其処まで至るのに二週間かかった。



 夜、アルフォンス殿下が私の部屋を訪れた。

「漸く君を抱けるよアトリア」

 私の頬に手で触れる。

 性行為の経験はこちらで何回かあるものの、女性的な要素での行為は初めてになるので少し怖くなってしまう。

「分かってる、怖いのは。だからそれが無くなるまで抱かないよ」

 アルフォンス殿下はそう言って私にキスをした。


 アルフォンス殿下と性行為をしたのは翌日の夜になってからだった。


 痛みはない、ただ快楽と蕩けるような甘さがあるだけだった。


 毎日ではないけれども、頻繁に体を重ねるようになった。



 それから、二ヶ月がたった診察の日。

「妊娠しておられます」

「よくやってくれましたアトリア!」

 アルフォンス殿下が私の手を取り泣き出した。

「本当に、有り難うございます……!」

「アルフォンス殿下、まだ妊娠が発覚しただけです、出産までの道のりがあります」

「ああ、そうだった。それまで君を支えましょう」

「勿論、私達も支えるわ」

 カーラが言うと他の皆も頷いた。

「私もお体をお守りします、どうぞ健やかに」

 セバスさんがそう言って頭を下げた。



 妊娠してから色々あった。



 つわりは酷いし、体は痛いし、食べ物が食べれるものがほとんど無くて、食べれたのがオレンジと血だけだった。


 王家は質のよいオレンジと、質のよい血を集めて私の為に使ってくれた。

 申し訳ない。



 他にも色々あったんだが、本当妊娠中の女性は大事にしないと駄目だなという思いが強まった。


 それくらい体が大変だった、子どもを宿すという行為は本当に色んな意味で命がけだ。


 そして普通なら十月十日のところだが、一年たったころ、私は破水した。


「ちょっと、破水しました」

「「「「「「わー⁈」」」」」」

 私の言葉にみんな慌てふためく。

 その中セバスさんだけが冷静に医師を呼んできた。

「アルフォンス殿下以外は出て下さい。アルフォンス殿下役にたたないと思わず、自分の腕をアトリア様に掴ませてあげてください、それでへし折られても笑顔で居て下さい」

「え、あ」

「分かりました」


 そして出産が始まった。


 結果。

 死ぬかと思った。

 生まれてきたのは吸血鬼の男の子の赤ちゃんとダンピールの女の子の赤ちゃん。

 元気に産声を上げてくれた。


 アルフォンス殿下の腕は折れていた。


「すみません! すみません!」

「いえ、いいんですよ。貴方の産みの苦しみを少しでもわかれれば……あいたた」

「本当すみません!」

 疲れ切ってはいたが、謝罪を繰り返した。

 双子の赤ん坊を抱き、私はこの子達は幸せにしようと誓った。


「おお、生まれたのかアトリアよ」

「アトリアさん、よく頑張って下さいました。しかも双子!」

 国王陛下と王妃様がいらっしゃった。

「まぁ、可愛い」

「アルフォンスとフェルミアの時を思い出すな」

 国王陛下が指で恐る恐る、赤ん坊の頬を撫でる。

「ふぎゃあふぎゃあ」

 すやすやと寝ていた赤ん坊は起きて泣き始めてしまった。

「貴方?」

「す、すまん」

「……もしかしてお腹すいたのかな」

「貴方」

「うむ、分かっている」

 二人は出て行き、私は赤ん坊にミルクをあげた。

 赤ん坊はんくんくと飲み、飲み終えたのを見てゲップをさせてあげた。


 すると女の子の赤ん坊も泣き出し始め、こちらにもミルクをあげた。


 お腹いっぱいになった二人はすやすやとまた眠ってしまった。

 赤ん坊のベッドに二人を寝かせて、私はそれを眺めた。

 幸せだなぁ、と。





 その夜、物音がした。

 目を覚まし、起きると人影が立っていた。

「誰です⁈」

 赤ん坊二人を抱きかかえ離れる。

 その人物は布を取った、その顔は私と瓜二つだった。

「わざわざ貴方と同じ顔にしたんだ、これからは僕が幸せになるんだ」

 とその人物が近づいた途端。

「外部から侵入者あり、とありましたがまさかこのような愚行をするとは」

 その人物を取り押さえ、セバスさんは行った。

「アトリア様、大丈夫ですか?」

「はい、セバスさん」

「離せ、離せ‼」

「お前が何者か洗いざらい話して貰うぞ‼」

 私の顔をした人物はそう言って連れて行かれた。

 何が起きてるんだろう──?






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