子作りの為に~悪意の残滓と幸せ~



「えっと、つまり私はアルフォンス殿下と子作りを?」

「まぁ、普通の方法では子どもは出来ぬ」

 だよねー男同士だもん。

「その為の薬だ」

 セバスさんが薬を持ってきた。

「体を子を産めるように変化させる薬だ一ヶ月間飲み続けてほしい」

「一ヶ月でいいんですか?」

 一ヶ月で体が変化するって事?

「うむ、其方への薬はセバスが持ってくる故、それ以外の者が持ってきた者は決して口にするな。王宮に其方への害を加える輩がどれだけいるかわからない」

「はぁ……」

「すまぬなアトリア、害なす者は厳正に処分する」

「うへぇ」

 やはり王族怖い。

 セバスさんが持ってきた薬を飲もうとするが止められる。

「このコップ一杯分を一日一回で良いのだ」

「なるほど、有り難うございます」

 私はコップに入れて飲み干す。

 ちょっとぼーっとしてきた。

「アトリア様、大丈夫ですか?」

「大丈夫です、ちょっと熱っぽくてぼーっとして……」

「副作用が出たようだな、セバスアトリアを寝室へ連れて行きなさい、私は他の者達と話をする」

「はい」

 私はセバスさんに手を引かれて寝室に戻ってきた。

 そしてベッドに寝かされる。

「アトリア様、幸せにしたいのに貴方ばかりに苦労をかけて申し訳ないです」

「そんなこと、ないれすよ……」

 私はそう言って目を閉じ眠りに落ちた。





 目を覚ましたら翌日になっていた。

 セバスさんが部屋に入ってきて食事を用意してくれた。

「どうぞ、食べて下さい」

 食べ慣れたセバスさんの料理の味が口いっぱいに広がる。

 美味しい。

 お肉はジューシーだし、パンは柔らかいし、血は美味しいし、スープも美味しい。


「ふぅ……」

「アルフォンス殿下達がお会いしたいと」

「あ、はい、いいですよ」

 セバスさんがそういうと、部屋になだれ込んできた。

 思わず私は引いてしまう。

「み、皆さん、ご機嫌よう」

「ああ、アトリア。今日は体調がよさそうで何よりだ!」

 アルフォンス殿下が抱きつく。

「ちょっとアルフォンス殿下! 貴方また抜け駆けを!」

 とカーラが言うと皆が抱きついてくる。

「ぐ、ぐるじい」

「皆様、早急にお離れになってください!」

 セバスさんが手を叩くと、見んな離れた。


 パブロフの犬かな?


「アトリア様は、これから体を変えていく為栄養をたくさん取らねばなりません」


 子ども産める体にする為だっていってたもんな。

「一ヶ月かけてですので、私が誠心誠意込めてお世話をさせていただきます」

「アトリア、体の方は大丈夫か?」

 レオンが訪ねるのでちょっと体の状態を確認する。

 倦怠感が強く、熱っぽい。

「ちょっと倦怠感が強くて熱っぽいです……」

「なら体を休めて下さい、貴方様の体は変化している最中なのですから」

「はい……」

 再びベッドに横になり、目を閉じる。



 すると声が聞こえてきた。



「何者かに唆されていると?」

「ええ、黒い靄のようなものが唆してそして行動に移してしまうと」

「アトリアにわずかな疑念があるだけでそうなるとは一体……」

「……魔の者か?」

「しかし魔の者は居なくなったはずでは?」

「そこも含めて父上と話をしよう」

「そうしましょう」


 バタバタ

 パタン


 皆が出て行く音がした。

『あ、と、り、あ』

 声がして飛び起きる。

 黒い靄は人らしい形をわずかにとった。

「う゛ぁ、ヴァイエン……」

 引き裂いたのに消滅していなかったのか。

 ヴァイエンはにたりと笑い私にじりじりと近づいてきて──


『しゅごてんしあたーっく!』

「ギャアア⁈」


 どこからともなく現れたシルフィに寄って退治された。

「じ、ジゼル? いやシルフィ⁈ 君帰ったんじゃ無いの⁈」

『ジゼルはおしまいだけど、シルフィはおにいちゃんのしゅごてんしだからね。おにいちゃんがてんじゅをまっとうするまではかえらないのー』

「そ、そうなんだ……」



「「「「「「アトリア⁈」」」」」」

 六人が駆け込んでくる。

「アトリア様⁈ 何があったんです⁈」

「えっとヴァイエンが消滅しきっていなかったようで……襲われそうになったところをどこからともなく現れたジゼルさんが退治して帰って行きました……」

 ある意味嘘は言ってない。

「ジゼルさん、天界に帰ったんじゃないの?」

「なんかヴァイエンの気配が残ってるから姿消して探し回ってたそうです……」

「ああ、彼女天使だもんね……」

「とにかくこれで判明したな、ヴァイエンが唆していた、と」

「そうですわね」


──本当にヴァイエンが唆してたのかな?──

『そうなのーそそのかしていたのー』


 考え込んでいると、シルフィが頭の中に話しかける。


──どうしてわかるんだい──

『おにいちゃんへのあくいをぞうふくさせたものたちみんなにヴァイエンのこんせきがのこっていたからなの』

──なるほど──

『にげあしだけははやいからなかなかつかまらなかったけどおにいちゃんのまえにあらわれたからじょうかできたの』

──なるほど──

『うごくのままならないおにいちゃんをもういちどおかしてまおうにしようとたくらんでいたからね』

──いい加減にして欲しいね──

『そうなの』


 私は心の中でため息をついた。


──でももう居ないんだよね──

『そうなの、でもお兄ちゃんにつよいあくいをもつひととかははやっぱりいるの』

──やっぱりかー──

『でも、まもってあげるからね!』

──ありがとうシルフィ──

『えへん!』



「アトリア?」

「ん、少し考え込んでました。本当にこれで終わりなのかと」

「どういう意味ですか?」

 セバスさんの問いかけに答える。

「私に強い悪意を持つ方はいるでしょう、ヴァイエンが手出ししたのはわずかな悪意の持ち主」

「……そうですね、それを見つけるのが我我の役目ですね」

「すみません」

「アトリア様があやまることではありません!」

 セバスさんが頭を下げる。


「私達は貴方様が幸せになるよう善処していくのが役目です」

「有り難うございます」

「そうですよ、アトリア、私達は君を幸せにしたいんだ」

「アルフォンス殿下……」

「そうですわ、アトリア。私達は貴方を幸せにするのが役目」

「ミスティ……」

 それに皆が頷く。


 私は、例え一部に祝福されていなくても、愛してくれる彼らに大切にされているなら幸せだなと、感じた──






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