魔の者~封印する宿命そして復讐の終わり~
謎の転校生は天使‼~魔の者とその真実~
あれから半年近く経ち、私達は二年生になった。
「今日から転入生が来ます。さぁ、入って」
ふわふわの金色の長い髪に、青い目の少女のような女性が入ってきた。
ぺこりとお辞儀をしてから──
「ジゼル・ローレンスです。どうぞ皆さん、宜しくお願いします」
ジゼルはそう言って微笑んだ、天使のような微笑みだなと思っていると、背中にうっすらと翼のようなものが見えた。
目をこすったが、やはり見える、半透明の白い翼。
ジゼルは私の方を見てにっこりと笑った。
何者なんだ、彼女は。
講義が終わり図書館で一人悶々としていると、ジゼルが声をかけてきた。
「アトリアさん」
「ジゼルさん、ですか」
「あれ、気づかないんですか?」
「え?」
ぽんっと音がなるとそこにはシルフィがいた。
『じゃーん! かみさまにきょかをいただいてちじょうにほんかくてきにまいおりたの!』
「ええええ⁈」
再びぽんっと音がなり、ジゼルに戻る。
「前回はアトリアさんの気力で魔王化を防げたけど、ヴァイエンが居なくなったことで魔の者達が本格的に動き出して色々大変な状態なの」
私は心あたりがあった。
アトリアが魔王になるルートは四年目に解禁される。
それまでにアトリアに上手く接することが魔王化を防ぐ手段になる、失敗したり関わらないと魔王化ルート一直線。
攻略対象キャラじゃないのにこの扱い。
鬼か制作会社。
アトリアを目指すと友情エンド止まり、他のキャラとくっつくと「君の事が好きだったよ、お幸せに」と言われてしまう鬼仕様。
だが、今はそれではない。
ヒロインのシルフィが不在、基殺されたから。
まぁ、その所為で転生者らしきシルフィーゼが魔王になって死んだが。
「ヴァイエンと違って、魔の者は自分が魔王になろうとアトリアを襲ってくるに違いないの、だから気をつけて」
ジゼルはそう言ってその場を後にした。
つまりヴァイエンは魔の者ではトップの実力の持ち主だったということだ。
それが魔王を探してるなら、自分が魔王になるなんて言えない。
だが、いなくなった今なら言える。
そういうことだろう。
全くもってはた迷惑な話である。
私はゴンと、机に額をぶつけた。
「やってらんないですよ……」
誰にも聞かれないようにぼそりと呟いた。
「仕方ない、戻るか」
そう呟いて屋敷へと向かう。
屋敷に向かう途中、バリンと音が聞こえた。
「ヴァイエンを殺したのはテメェかぁああ?」
悪魔といっていい姿、不気味な角に、黒い体、鋭い爪、裂けた口から見える鋭い牙。
「っ……そうだが」
「最初は殺してやろうと思ったが見目がいいじゃねぇか、犯して遊ぶにはもってこいだぁ」
不気味に笑うその存在が魔の者であることを理解する。
武器である、聖銀のナイフが複数本ある、それを使えば──
「ていやー!」
とか考えていると、シルフィじゃない、ジゼルが現れ、魔の者に蹴りを入れ吹っ飛ばした。
「ごぶへぇ⁈」
「魔の者は成敗します!」
びしぃ! と音がなっているかのように指さしをし、悪魔を見据える。
「た、ただの人間の蹴りがなんでごんなにいでぇんだ⁈ まさかお前天……」
「
天から光が降り注ぎ、悪魔は影も形もなく消えてしまった。
「成敗完了です!」
「何があったんですか⁈」
騒ぎを聞きつけた職員がやってきた。
「魔の者がアトリアさんを狙ったからやっつけました!」
「え? ジゼルさん、お願いもう一度言って?」
「魔の者がアトリアさんを狙ったからやっつけました!」
「……ちょっと事情聴取しよう、アトリアさんも来て……」
「は、はい……」
ジゼルはあれーと首をかしげている。
天使歴が長いから、人間界の事あんまり詳しく分からないでやっちゃったんだろうな、シルフィ。
「えっと、つまりジゼルさんは魔の者を狩ることに特化した家系の子で、此度魔の者がアトリアさん狙ってるから入学してきたと」
「はい!」
嘘が混じってるがジゼルは元気よく返事をする。
子どもっぽく見えるが、よく考えたらシルフィは子ども、ジゼルになってもそれを引きずってるんだろう。
「そしてアトリアさんは、魔の者を倒したから狙われる羽目になっていると……」
「そのようです……」
「国王陛下にお伝えしなければなりませんね」
「魔の者は北の大地、死の都を拠点としています。並の人間が行けば瘴気で死ぬこと間違いなしです」
「どうしてそんなに詳しいのですか⁈」
「長年魔の者と戦ってきた一族ですから!」
おそらく瘴気で死ぬのは本当なのだろう、それなら魔の者の根城を叩くのはかなり厳しいだろう。
「聖女の方達にい瘴気を浄化してもらいながら進むのが得策でしょうが、そうすると聖女の肩への負担が大きくなるので私、この四年の間に力をつけて魔の者を退治してこようと!」
「ご、ご両親は?」
「今も魔の者と戦ってますよー」
両親役がいるのだろうか?
いたとしても……熾天使の力を持つ大天使のシルフィの両親役となると熾天使以外何者でもないだろう。
そう天使がぽんぽん出てこられては困る。
というか天界の事情はどうなってるんだ?
事情聴取から解放され、部屋に戻る。
「「「「「「アトリア‼」」」」」」
「やぁ、皆さん……」
「一人の時間を設けたのが失敗だったかしら、魔の者に狙われるなんて……」
カーラが悔やむように言う。
「ジゼルさんに助けて貰ったんで……」
「彼女は何者なんだ?」
レオンが怪しんでいるように言う。
「聞いた話だと、魔の者を一人で退治しているのをスカウトが見つけて学園にスカウトしたそうだよ」
「魔の者をただの人間が?」
アルフォンス殿下の言葉にレオンは耳を疑っているようだった。
「ただの人間じゃないっぽいですけどね……」
「そうなのか?」
「魔の者を狩る一族だそうです」
「そんな一族聞いたことがない」
レオンがさらに怪しんでいる。
いや、そりゃ本当は天使です、なんて言える訳がない。
言うとしても、多分全部魔の者を退治してからのはずだ。
「隠れていたんじゃないか? 表だってそんな一族がいると知られると一族は狙われやすくなるだろう」
「……それもそうだな」
レオン、グレンの言葉に納得してくれたみたい、私は内心安堵する。
「ところでなんで二年に編入なんだ? 普通は一年では?」
「知識の検査と体術系統、魔法系統の検査をした結果三年からでいいところ本人が二年生からがいいと言って二年生になったそうだよ」
アルフォンス殿下が言う。
まぁ、学校内の情報はアルフォンス殿下が大体握ってるから、アルフォンス殿下に聞けば情報は得られる。
そういう事情があったのかと納得。
「何で二年?」
「さぁ……」
と、私は答えるしか出来なかった・
一人部屋に戻り、ベッドに腰掛けると、シルフィが現れた。
『どうおにいちゃん、しるふぃすごいでしょう』
「うん、すごいすごい。ところで君の目的は?」
『おにいちゃんをまもることと、まのものたちをやっつけること』
「気になるんだけど、魔の者ってどうやって生まれるの?」
『にんげんとかのこころあるいきもののわるいこころからうまれるの、だからなくならないの』
「……」
つまり私の復讐心からの生まれているということか。
『おにいちゃんのはじぶんでのりこえたよ』
「え?」
『う゛ぁいえんがおにいちゃんとおにいちゃんのおかあさんのふくしゅうしんからうまれたあくまだから、だからおにいちゃんをまおうにしようとしたの』
「ヴァイエンが私の復讐心?」
『そう、おにいちゃんのすべてのものへのふくしゅうしんからうまれたの』
衝撃の事実に私は言葉を失った──
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