学園生活の始まりと魔の者との対決~例え穢されようとも~




 学園に戻り、再び学園生活が始まった。

「課題の提出を──」

 皆課題を提出する。

 私も課題を提出する。

「はい、本日はここまで、課題をチェックするので今日の講義はこれでおしまいです」

 歓声があがる。

「はい、そこ課題に不備があったらやり直しですからね?」

 と言うとシーンと静まりかえった。

 そりゃあそうだろう。

 また課題をやり直すんだ、講義の間に何かやっていた子達にとっては一大事だ。

 勿論私のも。


 講義が終わったので図書館に居ると、職員の方に呼び出された。

「アトリア君に聞くのが手っ取り早いと思ってね」

「はあ」

「もしかして、この課題アルフォンス殿下やグレン君、レオン君、カーラさん、フレアさん、ミスティさんの六人と一緒にやった?」

「はい」

「やっぱり、中身が同じだったからね。誰かのを写した訳じゃ無いよね?」

「はい、それぞれ相談しながらやったら、中身が似たようなものに」

「うん、それならいいんだ。中身が似ていて、それでいて課題の答えの内容も六人ともトップクラスでいいからね」

「はぁ」

「これからも邁進するように、じゃあありがとう」

「いえ」

 そう言って教授の個室を出る。

「アトリア、呼び出されたけど、どうしたんだい?」

 アルフォンス殿下がやってきた。

「いえ、私達みんな一緒に課題をやったから内容が似たり寄ったりで、そこの確認を」

「あー……そういえばそうか、すまないねその呼び出しをさせて」

「いいえ、教授も私に確認した方がやりやすいそうなので」

「……なんか不満だね、ちょっと教授と話し合おう」

「それは辞めてください」

「そうかい?」

「はい」

「うん、そう言うなら分かったよ」

 アルフォンス殿下はその場を立ち去った。

 私は安堵の息を吐き、その場を後にする。


 図書館で本を読み終え、屋敷で食事をとり、露天風呂で皆とわいわいしながら入り、そして自室で眠った。


 次の日の講義も、順調だった。


 その週の講義も、問題は無かった。


 問題があったのは次の週。

 奴と遭遇した。


 図書館から帰る途中に遭遇してしまった。


「……」

「……やぁ、アトリア君。図書館に通っているのかい、勉強熱心だね」

「はい、貴方のような事をしたくはありませんから『私の父を殺した先生』?」

「……」

 奴は黙った、私は通り過ぎようとした。

「待ってくれ!」

 肩を掴まれる、不快だ。


「確かに私はとんでもない間違いを犯した、君の家族を台無しにしただが──!」

「人間を手込めにする吸血鬼が居ると信じていた、この国で。この国でそれを行うのは重罪、吸血鬼が処刑される」

「……」

「貴方の所為で母も早死にした、私は一人だ」

「君は一人じゃないだろう?」

「一人だ! 私の復讐心を理解するものなんていない!」


『いるともここに』


「「‼」」

「ヴァイエン‼」

 ヴァイエンの声が響き渡る。


 どこだと四方八方に首を振るが、姿が見えない。


 そう思ったら目の前に居た。

「やはり貴方の憎悪は、復讐心は魔王にふさわしい」

「っ……!」


「他者に、貴方が私に犯されるのを見られれば、きっと処女じゃなくとも魔王になるでしょう」

「‼」

 こいつどこで。


「特に復讐相手なら」


 服を破かれる。


「アトリア君、逃げるんだ」


 逃げれるならそうしてる!


「逃げられないよ、そのようにしてるからね」


 押し倒され、硬い物体を押し当てられる。


「アトリア……」


「見るな‼」

 汚辱感が酷い。

 陵辱されているとはこういうことか。

 吐き気がする。



 胸元から憎悪が、復讐心がより強く心を占めていく。



 駄目だ、駄目だ、魔王になんて、なるものか。



 どろりとした気持ちのわるい感触と抜かれる感触を感じつつ解放される。


「アトリア君……‼」


 立ち上がり振り向いて見れば奴は驚いた顔をしていた。

 目の色が白目が黒く染まり、金色の部分が赤くなっていたからだ。


「ふふふ、魔王の誕生──」


 がしと、ヴァイエンを掴む。


 そして両腕に力を込めた。

「いぎぎぎぎ⁈ なに、何をなさるのです⁈」

「貴様を引き裂いてやるんだよ!」

「お、おやめ、ください、どうしてです、なぜなのです‼」

「うるさい‼」


 生々しい音を立ててヴァイエンを私は肩から二つに引き裂いた。

 床に倒れたヴァイエンの頭を思い切り踏み潰す。

 黒い瘴気があふれ出した。


 気持ちが悪い。

 吐きそうだ。


「オェ、ェ」


 黒い液体を吐き出し、私はその場に倒れ込んだ。





「アトリア君!」

 クリスはアトリアを抱きかかえ、他の職員を呼んだ。

 他の職員教授が駆けつけ、医療担当の職員がアトリアを連れて行った。

「この黒いのが魔の者の死体……!」

「黒い液体は?」

「……魔の者に何かされたアトリアが吐き出したものです」

「念のためこれは採取と浄化療法を行おう」

「魔の者の方は完全に浄化を、今聖女達に連絡をしています」

 職員達はおのおのの仕事をこなしていく。

「クリス教授、何もなかったんですか?」

「何がです?」

「アトリアさんが何かされていたなら、クリス教授に危害を加えていた可能性が高いはずです、なのに貴方は無傷だ」

「……何故なのかは分かりません」

「アトリアさんは貴方を憎むのを辞めたのですか?」

「いいえ、辞めてないはずです。私と会ったとき、私に憎悪のまなざしを向けていたから」

「そう、ですか」

「……私はどうすれば良いのでしょうね……」

 アトリアを守る事も出来ず、ただ犯されるのを見ないようにすることしかできなかったクリスは無力感に苛まれていた──





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