【短編】パーティー追放された経験をまさかの場所で語る冒険者の話
八木耳木兎(やぎ みみずく)
【短編】パーティー追放された経験をまさかの場所で語る冒険者の話
「実は俺、パーティーを追放されたことがあるんです」
とある歌酒場で、俺はそう語った。
隣に立つ相棒と、俺の真ん前に立っている、初対面の七人が、それを聞いていた。
「故郷を同じくして、気心知れたパーティーのメンバーとして、それなりに頑張ってきたつもりでした。それだけに、レベリングのスピードが遅いからと言って、リーダーの勇者から『追放』の一言を言い渡された時のショックは、今でも忘れられません」
正直、ここまで流ちょうに話せることに自分でもびっくりしていた。
そこにいる七人は、温かかった。
七人の温かい人柄が、俺に自然に語らせてくれたのだろう。
「『追放』と言われて、俺は言い渡された酒場を出ていきました。酒場の窓ごしに、ドブネズミか何かを見るような顔で俺を見つめる勇者たちの顔が見えました」
思い出したくなくて、ずっと心の中に閉じ込めていた記憶。
それもこの七人を前にすれば、自然と語ることができた。
「でも、俺はこいつに出会えました。誰もかれも信じられなくなって、故郷に帰って引きこもろうとしていたところに、モンスターに襲われて殺されかけている、このヨルザと出会ったんです」
そう言って、俺は隣に立っている銀髪の少女を紹介した。
「ヨルザを助けた後、彼女が【鑑定】スキルを持っていたことがわかりました。それもそんじょそこらの鑑定師では見抜けない、一見普通のスキルしか持ち合わせていない、俺みたいな冒険者が持つ【隠しスキル】を見抜く鑑定能力を持ってたんです」
ヨルザは最初、見知らぬ集団を前に緊張していたが、七人のフレンドリーな空気を前に、徐々にその緊張を解いていった。
「彼はレベルが上がりにくかったんじゃないんです。経験値がレベルアップの為ではなく、隠しスキル【絶対防御】と【絶対回避】の覚醒のために蓄積されていただけなんです。ダンジョンで強力モンスターと戦い経験値を稼ぎ続けた結果、1年後、彼はその隠しスキルに覚醒できました」
ヨルザが語ってくれたその言葉に、聞き手の七人は目に見えて和やかな笑顔を届けてくれた。
「俺はこの力を、俺のようなはぐれ者たちのために使おうと考えました。その結果、囚われのエルフ・レイナや、元奴隷の猫人族の娘・ミーナなど、色んな仲間に恵まれました。みんなかつての勇者パーティーみたいなうわべだけの関係じゃなくて、心から信頼し合える仲間たちです」
俺がこの場で自然と話せている本当の理由が、やっとわかった。
この七人が、ただフレンドリーだっただけではない。
この七人の親しげな空気に、旅の中で出来た仲間たちと同じ空気を感じていたからだ。
「彼女たちに囲まれたことで、俺も、もう一度心から笑えるようになったんです。」
話し終えた俺は、非常にスッキリした気分だった。
おそらく追放されてから、今までで一番。
聞き手に回ってくれた七人のおかげと言っても過言ではない。
「そっかぁ……大変だったねぇ、キミも」
七人のうち、リーダー格の中年の男性が、励ましの言葉をかけてくれた。
そして、彼は言った。
「……じゃあ、今日もさっそくいこうか」
俺の話を聞いてくれた七人―――三宅裕司、柴田倫世アナ、モト冬樹、グッチ裕三、中山秀征、知念里奈、赤坂泰彦の七人は、合図とばかりに手を振り上げた。
俺とヨルザも、それに続いて手を上げた。
「せーのっ、」
そして、始まりの合図を告げた。
「「「「「「「「見たい、聴きたい、歌いたい!!」」」」」」」」
―――――――――――――――――――――――シャキーン!!!
◆ ◆ ◆
パタパタパタパタパタパタパタパタ……ドン!!
「第10位、『ザ☆ピ~ス!/モーニング娘。』。この方が歌いに来てくれました、HIRO☆TSUNODA!!!!!」
【短編】パーティー追放された経験をまさかの場所で語る冒険者の話 八木耳木兎(やぎ みみずく) @soshina2012
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます