七人の女

西順

七人の女

 男は七股していた。月曜日から日曜日まで、日替わりで女と付き合っていたのだ。普通はそんなもの許される訳が無い。だが男は許されていた。


 モデルを職業としている男は、185を超える長身美体に、神でさえ嫉妬する美貌で、少し口角を上げるだけで老若男女問わず虜にする。男はそんな存在だった。


 そんな男だから、寄ってくる女は引きも切らず、逆に七股で収まっているのが不思議と思われていた。実態は七人に留まらず浮気をしまくっていた訳だが。七人の女は、それでも彼女と言う座に収まっている自分たちに陶酔していた。


 しかし女であれ男であれ、花の命は短いもので、男がそろそろ三十になろうかと言う頃だ。女たちは不安を抱き始めていた。男はいまだ美しい。しかしこれからも美しいままの保証は無い。むしろこれから醜く老け衰えていく可能性の方が高い。女たちはそれが我慢ならなかった。


 男の三十歳の誕生日。その計画は決行された。男は七人の女たちによって殺されたのだ。バラバラ殺人であった。男はその身体を八つに分けられ、それぞれの部分を女たちが持ち帰った。


 月曜日の女は左腕を持ち帰った。男の腕枕で寝るのが好きだったからだ。


 火曜日の女は右脚を持ち帰った。男に踏まれる事に快感を覚えていたからだ。


 水曜日の女は胸部を持ち帰った。その見事な胸板に顔を埋める事に執心していたからだ。


 木曜日の女は右腕を持ち帰った。自分を殴るその腕を更に細かく切り刻む為に。


 金曜日の女は腹部を持ち帰った。見事に割れた腹筋をさする事が女にとって至上だった。


 土曜日の女は左脚を持ち帰った。女も嫉妬する脚線美に頬ずりする為だ。


 日曜日の女は頭部を持ち帰った。端正なその美貌は女の家のリビングに飾られていた。


 男の身体は八つに分けられたはずだが、どの女も持ち帰らなかったものがある。それによってアシが付き、女たちは捕まったのだ。


 残された男の小さな局部には、女たちによってイタズラ書きがされていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

七人の女 西順 @nisijun624

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説