実家の話

泥桃

お坊さんの話

 8月某日

 お盆の時期を迎えると、町は一気にあわただしくなる。

 スクーターに乗ったお坊さんが走り回り、家々は仏花に色のついた砂糖菓子、どこにしまってたのか見たこともない分厚い座布団が一つ出てきたりする。

 忙しい我が家のお坊さんは、時間になっても現れず。

 15分ほど遅れてやってきたお坊さんは両手を広げて「セーフ」と言いながら入ってきた。

 アウトである。


 そのあとお経を上げてもらい、茶菓子を勧めて断ってもらう一連の流れを経ての帰り際。

 お坊さんは吹き出す汗を抑えながら、ぎこちない笑顔でこう言って去っていった。

「いやぁしかし。えらいとこ住んではりますな。大変でしょう。」


 そういう家に、私たち家族は住んでいた。


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