【一話完結型】異世界転生でもらったスキル、あなたは正しく使えますか？

第1話 『ネットショッピング』

　異世界転生したときは混乱したけど、新たに得た『ネットショッピング』のスキルで、地球の品物を購入できると気づいてからは、便利な物を売ってすぐにお金を稼げた。

　定番の塩や砂糖はもちろん、一般庶民向けには生活雑貨が、お貴族様向けには高級家具がまさに飛ぶように売れた。

　異世界のお金をチャージして地球の品を買うのだが、だいたい元の金額の１０倍から、多いものだと１００倍くらいの値段で売れるのだから、まともに働くのが馬鹿らしくなってしまう。

　まさに錬金術。

　ここらで最も栄えている王都に拠点を移して、でかい屋敷も買って、後は悠々自適に暮らしていけるだけの蓄えができた。

　そんなところに、ある人物がやってきた。

「初めまして、王国財務省税管理局のタスクと申します」

　税管理局？　いったい何の用だろう。

「まずはこちらの書類をご確認ください」

　手渡されたのは、封蝋で閉じられた書類だった。中を確認するとそこには、脱税と貨幣持ち出し疑いの文字が。

「ご確認いただけたようですね。あなたには脱税と貨幣持ち出しの容疑がかかっています」

　なんだって！　どういうことだ！？

「まず最初に、あなたには自己弁護の機会が与えられます。日時は、十日後の昼の鐘一つ。場所は財務局の第一ホールです」

　自己弁護？　いきなり裁判なんて冗談じゃない！？

「暴れないでください。我々には、あなたを拘束する権限もあるんですよ」

　ぐっ……。

「はい。では詳細な容疑について説明します。まずは脱税から」

　は？　物品にかかる入市税？　特定品目にかかる専売許可税？　特定色使用税？　まだあるのか、こんなもの知らないぞ！？

「はぁ……。税というのは、知らないから払いませんで済むものではないんですよ。この国で、この王都で商売をするのでしたら、きっちり払ってもらわなくては」

　くっ、払えばいいんだろ払えば！

「あなたは商売を開始してから一度も税を払っていませんね。そのため罰則金が追加されます」

　なんだこの金額は！

「期間が期間ですから、当然罰則金も多くなります。ここまでの金額は王国初かもしれませんがね」

　くそっ、だが『ネットショッピング』のスキルがあれば払えない金額じゃない。少し時間がかかるだろうが、払えばいいんだろ。

「払う意思があるのは良いことです。まあここまでは前座のようなものなんですが……。あなたには貨幣持ち出しの疑いがかかっています。あなたの所有する貨幣をすべて提出いただけますか。計量はこちらの秤で行います」

　は？　そもそも貨幣の持ち出しってなんだよ！　そんなことやってないぞ！

「はぁ、こちらも知らないのですか。王国では貨幣の国外への持ち出しに制限をかけています。脱税の調査の過程で、あなたが得た金貨の枚数とあなたが使用した金貨の枚数に大きな乖離があることが発覚しました」

　金貨の枚数？　それがなんだって言うんだ。

「端的に言えば、あなたに支払われた金貨の一部が消えているのですよ。王国内からね」

　それは……、あっ！　『ネットショッピング』のスキルか！　あれはスキルにお金をチャージすると、貨幣がどこかに消えていく。まさかこのせいなのか！？

「どうしました？　随分動揺していますね。心当たりでもあるんですか？」

　い、いや、なんのことかわからない。

「まあいいです。では貨幣が保管してある場所へ案内していただけますか？　あなたが得た金貨は大量です。それこそ下手な金庫では収まらないくらいに」

　まずい！　地球の品の方が高品質だからって、金貨のほとんどはスキルにチャージしてしまっている。どうにかごまかさなくては！

「ふむ。商会の方に保管してある、ですか。ご心配なく、そちらへも税管理局が訪問しています。しっかりと、一枚残らず、貨幣の枚数を確認していることでしょう」

　お、終わった。完璧に把握されているんだ。金貨が消えていくのがこんな大事になるなんて。

　いやまだだ！　自己弁護まではまだ十日ある。それまでに国外に逃げ出せれば、『ネットショッピング』スキルでいくらでもやり直せる！

「ああ、自己弁護が十日後と言いましたが、あれは脱税についてのみです。貨幣の持ち出しは重罪、つまり本日付であなたを勾留します」

　なに！？　やめろ、離せ！

「あまり暴れないことをおすすめしますよ。そうすれば、生きては、いられるでしょうからね」

　ひっ！　どうしてだ！　なんでこうなったんだ！　ただ便利でいい物を売っただけだろ！

　やめろ！　どこへ連れて行くんだ！　やめてくれっ！　やめろー！！