第5話
次に意識があったのはあり得ない程腹が痛くなった時だった。夢の中で俺はフィリピンを旅行していて、マニラで夕暮れに屋台を冷かしていた。すると、そこで知らない男数人に取り囲まれた。フィリピンに行く男性は多いけど、実は治安がものすごく悪いらしい。俺は身の危険を感じて、素直に財布を渡したが、その相手からブスっと腹を刺されてしまった。
痛くてたまらないが腹を抑えたくても、手が動かない。
眠い。
気を失いそうだ。
痛いけど。
眠くてたまらない。
***
次に目が覚めた時、俺は病院にいた。俺は病室の目隠しのカーテンに囲まれていた。
腹の傷が痛んだ。俺は一瞬自分がフィリピンにいるのかと思った。違う。俺はカノンとラブホテルにいたんだ。俺は誰に刺されたんだろう。状況からしてカノンである可能性が高い。何故だろう。俺は悩んだ。
結論、彼女はサイコパスだったということなのか。人を殺してみたいとか、親を失望させたいという理由で知らない男とホテルに行って、刃物で刺した。少年院行きだ…。そうじゃない。14歳未満(14歳を含まない)の少年は刑事責任能力がないから、刑罰法令に触れる行為を行っても犯罪とはならないんだ!すごい。天才じゃないか。やっぱり、頭のいい子は考えることが違う。俺は未成年とのセックスを餌におびき寄せられたんだ。
いや、待てよ!もしかして、俺が無理矢理強姦しようとして、抵抗して刺してしまったという展開になっているかもしれない。俺は狼狽えた。それは困る!会社をクビになってしまう。警察が来たら、すぐに弁解しようと決めた。それから、頭の中で何度も警察に説明している場面を思い出していた。どう考えても俺に不利だ。
それからすぐに、実際に刑事がやって来た。
「僕は何もしていません。あの子が悩んでいたからホテルで話を聞いていただけです」
俺は長々と弁解した。最初からそんなつもりはなくて、ただ休憩するためにホテルに入っただけだと伝えた。そんなのは誰も信じないだろう。だって、座りたいだけなら、ラブホじゃなくて漫画喫茶やカラオケでもいいんだから。
「コンビニでコンドームを買ってますよね。ホテルで使うつもりで買ったんじゃないですか」
「ああ、あれは…カノンがふざけてカゴに入れたんです。僕はいつも持ち歩いてるんで…買わなくてもポケットにありましたから」
何となくまずい雰囲気になったと思った。
「そうですか…。あの子から一緒に死のうって話は出ませんでしたか?」
「え?それは全然。明るくて、死ぬような感じの子じゃありませんでしたから。カノンは今どうしてるんですか?」
刑事はちょっとためらいながら言った。
「亡くなりました。あなたの横で」
「え?」
俺の思考は止まってしまった。
カノンは俺を刺した後、自分も隣で手首を切っていたそうだ。
俺たちが出て来ないから、ホテルの従業員の人が見に来てくれたらしい。
彼女は失血死で、俺はたまたま助かった。
彼女は一緒に〇んでくれる人を探していたみたいだ。
それなら、そういう専門のサイトがあるんじゃないだろうか?
どうして俺が?
俺はまだ生きたい。
最近の子はすぐ〇たいと言うそうだ。
まるで口癖みたいだ。
あんなにかわいい子が何故〇にたいと思ったのか。
俺にはわからない。
モテモテで人生バラ色じゃないのか?
かわいいから、学校でいじめに遭ってしまったのか。
カノンは親が厳しすぎて、小学校低学年から無理矢理勉強させられていたらしい。
受験のために、同世代の子が夢中になるような娯楽を取り上げられて、中学に受かってからもずっと走り続けなくてはいけない。
そんな終わりのない生活に生きる意味を失ってしまったのだろうか。
亡くなってしまったのは気の毒だけど、見ず知らずの第三者を巻き込んだんだから、俺は彼女に同情はできない。
俺はまだ生きているけど、内臓を摘出していて、今は薬で生かされている。
死ぬまでそれを飲み続けないといけない。
だから、「知らない人は怖いよ」と、俺はみんなに言いたい。
ローティーンのギャルと出会った話 連喜 @toushikibu
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