第89話 ノマドロボでの会議
半分地面に埋まっている黒紫の金属を触ろうとすると、Brynkが警告を鳴らす。相当量の有害物質が検出されている。よく見ると接触している土が黒く変色している。マオゥはこんなものを付けられていたとは……可哀そうだとは思わないけどね。普通の人なら死に至る有害物質でも、彼にとってはただの鉛の服だろう。
いつまでも、外にいても仕方がない。
最先端のノマドロボに興味を持ち、触ったり見上げたりしながら中へと入る。マオゥはホールの壁側で、片膝をついて下を向いている。治療に集中しているようだ。みんな近寄らないように、ホール中央の席に座る。
マオゥはいったん置いて会議となる。まずは、この機体の見取り図を見て部屋を振り分ける。部屋数は8部屋もある。今度はハンターキラーたちと一緒に寝なくて済むと喜んだが、結局、俺とテワオルデとマリも同じ部屋になった。
マオゥは全員一致で1人部屋となる。そもそもその巨体で機体内を移動できるのか怪しんだが、体の大きさを変化できるようで、2.5メートルから6メートルまで身長を変えられる。
話し手はほとんどテワオルデと俺だ。たまにギルガメキラムとマリが言葉を挟むくらいで、マフィアの2人は居づらいのか外に出ていった。実際、部屋だけ決めたら彼らに用はない。
その後、役割など話しているうちに時間が経つ。メンバーの数名が会議への集中が散漫となっている中、ケイラは真剣に俺の話を聞いてくれた。少ない知識を振り絞った作戦にひとつひとつ感心してくれた。ヘルドやマリが会議に飽きてあくびをしたり、頭に手を組んだりしているが、彼女は姿勢を崩さずにいる。まっすぐに俺を見るその凛とした顔に少しドキッとしてしまう。
ヘルドは俺の顔を見てすかさずに悪態をつく。
「どうしたウエノ……顔が赤くなってるぞ。ボケッとするなよ……。やる気あるのか?」
「お前がやる気を言うなよ! まず組んでる足を下ろして話を聞く姿勢になれ」
「どうした、そんなに慌てて……」
と微笑を浮かべる。そして頭に手を組んだままケイラに向かって言う。
「おい、ケイラ。寝る時は部屋の鍵をしっかり閉めとけよ。こいつ何するか分からないからな」
「なんてこと言うんだよ。あれは誤解だって! そんなことするわけないだろう。ケイラこいつの話は聞かなくていいからな」
「どうかな……以前のロボの中でも私たちが寝ている時に襲われそうになったからな」
「誰がお前を襲うんだよ……寝ぼけながら蹴飛ばしてきたのはヘルドだろ」
話が脱線していき、そろそろ会議も終了となる。ばらばらに立ち上がりそれぞれの役割や部屋に向かう。
おもむろにリリフィアが、ホールの端で寝ているマオゥに近寄る。金槌を小さくして持ち、マオゥを小突きながら言った。
「おい、……こいつクセェぞ。今まで我慢してたけど……ヤベェくらいクセェ……」
「こ……こら。あまり変なこと言うな」
パッと目を開けたマオゥが急に立ち上がる。
息を呑むみんなの前で口をひらく。
「また、何か迷惑をかけましたかマスター?」
「い、いや。ダンジョンにはシャワーなどないだろうなと思って。寝る前にシャワーに入ったらどうだい? 部屋割りも決まったから部屋で寝たらいいよ」
「我に部屋など要りません。シャワー……なるほど。モンスター達と生活しているゆえ、普段入る習慣がないため失礼した」
「いや、ホールで寝られても困るから……部屋で休んでくれ。シャワーの場所とトイレや部屋を説明する」
「分かった……」
「……あ、あと」
「何でしょうか、マスター」
「ドアは壊さないでね……」
「了解です。マスター」
そう言って、各部屋の説明の後、体いっぱいの脱衣所に無理やり彼を押し込んだ。
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