第69話 絶望
背後の森の中から足音が聞こえる。1人だけではない。多くの足音が聞こえる。……そして、木々の間から姿を現した。肌が溶けている人間の集団だ。剣を持ち動きは遅いが、後ろから次々と足を引きずりながら近づいてくる。
ミラクルが諦めたように話しかけてくる。『もう逃げることも出来ないようですね。ゾンビキングです。無限に増殖しますので倒すことはできません。これもクラスSに近いクラスAのモンスターです』
遠くから響いていた炸裂音が止んだ……。
トロルボスが倒されたか……仲間が全滅したかのどちらかだ。
肩の力が抜ける。「そうか……ここまでか……」何のために……この世界に生まれてきたのだろうか。
すでに、死に対する恐怖は無かった。俺の判断で、みんなを殺してしまった……。あの世でみんなに謝らなければいけないな。
みんなが止めたのに俺の独断だった。でも……こうなるなら、もっと必死に止めてくれたら良かったのに……テワオルデもなんで俺に確認なんてしたのだろうか。何も言わずにここを避けて通ってくれたらこんなことにはならなかった。想像を絶するほど強いと言って欲しかった。抗うことすらできないほど、強いなんて思わなかったよ……。
……周りの木々が燃え始める。
空から炎が放たれている?
上を見ると
それに、地震のような振動と、地響きが聞こえてくる。
上を見上げると木よりもはるかに高いところに頭が見える。テレビで見た事がある。恐竜ってやつだ。これは幻か? 夢か?
肌の溶けたゾンビの集団が、俺と倒れているシンを囲うようにじわじわと近づいてくる。遠くまで囲われていた。
『空を飛んでいるのはワイバーンです。3体いますね。恐竜のように見えるがドラゴンです。それ以外にもまだ別のモンスターが向かって来ているようですね。すべてがクラスAです。ちなみにドラゴンはクラスSです。私も選んだ人間を間違えたみたいです。……
……やっぱりミラクルはただのAIじゃなかった。Brynkと繋げると機械的な操作が、脳波により出来るようになっていた。ミラクルの代わりに感情の無いAIの無機質な声が聞こえる。
いつも邪魔な存在だと思っていたが……こんな死ぬ間際でいなくなってもな……。
寂しいじゃないか…………。
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