第62話 クラスB キルオーガ
朝陽が登り待機場にいる俺を照らす。そんな気持ちのいい朝にいつもと変わらずクラスCのモンスターが出てくる。即応班当番の魔法使いのギルガメキラムとエルザレットの協力を受けながら、数体を順調に倒している。
待機場でエルザレットと無駄話をしていた時、ついにクラスBのモンスターが出現した。
レベルがある程度上がり、自信を持ち始めていたが、このモンスターは見るだけで体の震えが止まらない。ミラクルがモンスターの情報を急いで提供する。今までとは比べ物にならないほど強い。名称はキルオーガ。凶暴で体の大きさも3メートル以上。その強靭な相手だと、一撃で命を落とす可能性がある。遠巻きで攻撃するしかないだろう。その時、操縦しているテワオルデから通信が入る。
「大変な敵と遭ってしまいました……。他の休憩しているメンバー達にも応援の通達を出します」
「了解です! よろしくお願いします」
マシンガンで魔弾をキルオーガに撃ち込むが、ダメージがある素振りはない。直接攻撃する必要があるのか迷っている時、
強力な魔法がキルオーガに直撃し爆発が起きる。苦しみダメージがあるかに見えたが、すぐに態勢を立て直し反撃を開始する。怒りに満ちた恐ろしい形相で口を大きく開き、そこから衝撃波を放つ。エルザレットは冷静に波動バリアを張る。衝撃波がバリアに衝突し、爆発を起こす。衝撃波が強かったのか2人は吹き飛ばされる。「危ない!」……とつい口にしたが、2人は兵機の後ろに綺麗に着地した。
今まで経験したことのない圧倒的な戦闘に衝撃を受ける。
――俺は何を手伝える? と、震える声でミラクルに尋ねる。
『とにかく技を繰り出してください。全力を出し切ってください。もし、敵の反撃を受けると一撃で治療カプセル行きです。もしくは死亡します』
――だよな! 死ぬかもしれないよな。だが、それで恐れる臆病なら何もできない!
心臓が激しく鼓動する。待機場から飛び降り、地を蹴り飛ばし駆ける。モンスターは波動を打ち終え隙が生じている。そこに必殺技の三連撃を繰り出す! 当たった……手応えは良かったが……、ダメージはほぼ無い。少なくとも一瞬は敵を怯ませた。しかし、即座に反撃される。大きな体のからは信じられない攻撃速度だ。紙一重で剣を構えて防御するが、凄まじい衝撃に吹き飛ばされる。
「やばい……」うまく着地できずに転げ回る。追撃をかわすため慌てて立ち上がろうとするがもたつく。目前に迫るキルオーガが巨大な剣を振りかざす。……その瞬間、七色に輝く魔法が次々とキルオーガに炸裂する。ギルガメキラムとエルザレットは隙を狙っていたようだ。
這うように待機場に戻り、急いで怯む敵へ特性魔弾を撃ち続けた。3人での連携で魔法と魔弾を、反撃の隙なく撃ち込む。だが、キルオーガは双手を振り、魔法や魔弾を弾き返し始める。
これだけの攻撃を受けながら徐々に近づいてくる。その桁違いの強さに竦むが、恐怖を隠しながら「うぉぉぉ!!」と叫び特殊魔弾を撃ち込む。一定の距離に近づいてきた時。突如、こちらに向かい飛び掛かってくる。まさか、その巨体でここまで跳躍してくるとは思わなかった。キルオーガが技を発動する。声にならない叫び声をあげながら両手で剣を振り下ろしてくる。魔弾を当て続けるが効果は無い。
やられる――目はつぶらなかった。……殺されるその瞬間までは絶対に負けないという強い気持ちはあった。そして……そこへマリがナイフ片手に飛び込んできた。魔法とナイフを融合させた技で、キルオーガの攻撃を弾き返し、さらに傷をつける。茶色の血を噴き出すキルオーガ。その時、後ろから4人のハンターも参戦して攻撃を繰り出す。
キルオーガは血を噴き出している腹に緑色の発光を起こす。そして見る見る間に傷が塞がる。回復もできるのか! と、驚愕している暇はない。
キルオーガは口角泡を飛ばしながら、全方向からの攻撃をかわし反撃をする。その目は血走り、口はひん曲がり凄まじい顔だ。こちらを威嚇し続ける敵だったが、隙の無い攻撃を受け続け、次第に動きが鈍くなった。マリと4人のハンターが後ろに下がったタイミングでギルガメキラムとエルザレットの連携魔法を発動させる。空間を歪めるような
バリアが剥がれ、毛が燃え、肌が焦げている。煙と異臭が漂うその中にマリの電光石火の攻撃がキルオーガを襲う。マリの持つナイフが七色に輝き、彼女自体からも神々しい光が放射される。構えていたキルオーガだったが対応出来なかった。腹から背中まで裂けドバッと血が溢れ出す。うつ伏せに倒れ、その後灰のように消えていった……。
さすが魔王と自称するだけある。それに魔人と呼ばれる4人の美女達も。容姿端麗ながらも強力無比、クラスBの
勝利の祝辞もわずかに、また戦闘への備えに戻る。ギルガメキラムとエルザレットは全ての魔力を使い果たし戦えない。その代わりにマリが担当となる。俺も疲労困憊だが、休みたいなんて言えない。体に鞭を打って、待機場に乗り込んだ。
……それから乗り降りを繰り返すこと20数回。ようやく交代の時間となる。
シンやパラスパラスと交代時に、休みが短かったと不満を言われる。だが、交代してもらわないと俺も体がもたない。「俺はこれから運転がある」と、言って兵機の中に入った。
運転中何度か寝落ちしてしまった。最後はテワオルデに肩を叩かれて「お疲れ様です」と言われハッとして目を覚ました。意識朦朧の運転で事故は無かったが気を付けなければならない。
そして、休憩するために部屋へ戻る。みんなの自由な寝相を眺めながら部屋の奥へと向かう。今日はスペースが空いていたが、マリとヘルドの間である。どんなに疲れていてもそこだけは勘弁だ。また物置に入り体育座りで睡眠をとった。
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