第20話 作戦計画


「この近くで高速船が収納されているのはD236-48のブロック、その近くまで簡単に行ける。許可が要るけど、過去にその許可を10回ほどとった事があるわ。だからここで怪しまれることは無いはず」

 

「どうやって、高速船を移動させるんですか?」

 

「非常口への移動経路は1つ。一旦修理センターに運び、それからルート設定をすれば自動的に非常口に移動できる」

 

「気付かれると思いますが、だって変じゃないですか、非常口には避難用の船しか無いはずですし」

 

「いや、そうでもないの、非常口の場所によっては、攻撃艇や救助艇が保管されている場所もある。理由が無くても、1日ぐらい誤魔化せられるわ」

 

 そう言いながらも、脇の下あたりを手でさすってくる。ちょっと話が頭に入らないんですけど。そもそもこれは恋愛のポーズなのだろうか。ただ、楽しんでいるだけに思える。

 

 先ほどから、リラさんの、自分に対する態度の変わりようが大きくてドギマギとする。この真っ白で無機質な部屋には椅子とテーブルしかない。その中で2人きり触られながら説明を聞いている。自分の鼓動は高鳴る。

 

 頭を振り考える。『冷静になれ。いったい何を考えているんだ。リラさんの行動は監視を逸らすため、仕方がなくやっているだけなんだぞ。よく考えろ。リラさんはただの演技なんだ。表情を見れば分かるだろ』

 

「え」

 

 つい声が出てしまった。リラさんも顔が紅潮していて、はっきりと自分に意識をしているようだ。

 

「何、関係ないこと考えているの、怒るわよ」

 

 リラさんはさらに顔を赤くしながら、自分のほっぺたをつねる。


「あ、いえ、ごめんなさい。しっかり聞きます」

 

 心の中で叫ぶ『もしかしてリラさんも自分に好意を抱いちゃってる?!』なにやら幸福感のようなものが体を包む。不幸な状況下にあり、こんな緊迫している中なのに、感情が昂ぶってくる。こんな状況だからこそ、余計に幸福感を感じるのかも知れない。


「まあいいわ、簡潔にまとめるわよ。まず高速船を修理センターに移動させる。管理システムを操作して非常口D3036-A6Fに移動させる。非常事態の誤作動を起こして非常口を開ける。そこから脱出する」

 

 自分の腕に手を添えながら真剣な眼差しで話している。その表情が何とも可愛らしく、艶やかであった。

 

「まとめたら、簡単に思えてきますね。でも、AIが監視している中で誤作動なんて起こせるものなのでしょうか」

 

「信頼できる同期にAIのメンテナンスの幹部がいる。その人から色々と話は聞いていたの」

 

「そうだったんですか」

 

「この作戦は、結構前から考えていたことだったのよ」

 

 少し驚いた。今までこんな事をおくびにも出していなかったからだ。


「では、さっきの続きね」

 

「はい?」

 

 再び、迫ってくる。

 今度は体を抱きしめて濃厚なキスをする。

 体が密着し胸が当たる。全身が一気に硬直する。心臓の音が伝わっているようで恥ずかしかった。


『リラさん、もしかして楽しんでる?』

 

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