第18話 突然
リラさんは深刻な表情で脱出計画について話し始めた。
「脱出の方法に関してだけど、艦内に被害を与えるような方法は、様々な問題を引き起こすの。そうなれば、最悪、私たちが群星の中で最も追われる存在になるかもしれない。そうなれば、この群星圏から外に逃げないといけないくらい規模が大きくなってしまうわ」
想像するだけで永遠に逃げ続ける未来が浮かぶ。かなり過酷な状況が待っているのが分かる。だが、しかしその一方で、リラさんとの共に過ごす時間を想像すると、それも良いと考えてしまう。
その思いを振り払うように言った「逃げ切るのは厳しいですね。逃げ切れないと思います。被害を最小限に抑えて逃げられる方法を探したい。せっかく未来に来たのだから、いずれ、この世界で普通の生活を送りたいです」
リラさんは
「そんな方法があるんですか?」
「ある。でも考えられる選択肢は1つか2つしかない。そして、それを成し遂げるにはあなたの協力が必要よ」
「自分の協力ですか? やれることならなんでも協力します!」
「なんでも協力するのね。分かったわ。それでは、具体的な計画を説明するから、よく聞いてね」
「はい。もちろんです」と答える。
鼓動が高鳴るのを感じる。これからの行動で、自分とリラさんの運命が決まる。『自分やリラさんの命が掛かってるんだ。集中しろ』と心の中で覚悟を決める。
「この船から逃げるには、非常口を利用するとリスクが少ないわ。守衛も通常時にはいないから、大きな騒動を起こさずに逃げることができるし、非常時での混乱で私たちの脱走の発見も遅れるはず。その方法だけど、この宇宙戦艦内は特定の温度を保つようになっている。だけど、もし部屋の温度が一定以上に上がると、警報が鳴り、非常口が開ける仕組みになっているの」
「その非常口から、脱出用の小型機で逃げるんですね」
「そう、非常口の操作は基本の訓練で習うもの。私は、その非常時の対応を任されているから、正確に操作できるわ」
留置されている自分の立場だとほとんど不可能に近い方法だが、上級兵であり、上級技師のリラリース技師長が協力してくれるなら脱出までなら比較的容易と考えられた。
「私がいるのでこの戦艦から外に出るまでは楽にいくと思う」
「なるほど、逃げ出してからが肝心なんですね」
「そう。でも半分正解ね。逃亡してからでは遅い。逃げ出す前からその準備が必要」
「準備ですか、でも僕は行動に自由が無くて手伝えないかもしれません」
そのことには今は答えずに、リラさんは話を続ける。
「時間は2日間ある」
「2日もあるんですか?」と驚く。直ぐにでも逃げなければと考えていたからだ。それに2日も準備をしながら船内に残るのは、リスクであり、怖いと思う。
その気持ちを汲んでか、リラさんは一呼吸おいて、なだめるように話した。
「そうよ。でも大丈夫。それに時間をかけた方が確実なの」
その言葉に自分は頷く。
「だけど、2日日間で実際に準備ができるかどうかは別の話。特にあなたは、行動に制限されていて、手伝えることが限られているわ」
「そうですよね、こんな状態の自分に、なにができるか分かりません」
「計画を整理する。準備することは2つ。まず1つ目に脱出の発見を一時間以上遅らせる事、この準備は何とかなるかもしれない。非常センサーと監視AIを操作できれば大丈夫。最悪テロを装って爆発させればいいわ」
「は、はい。意外と大胆なんですね」
「何よ意外って。元々大胆よ」
それは自慢することなのだろうかと思ったがうなずいた。
「2つ目が肝心、超高速船を逃亡で使いたい」真剣な顔でリラさんは言った。
「非常用の船では、どれだけ時間を稼いでも、すぐに追いつかれてしまうの」
「非常用は、速度が遅いんですね」
「そう。だから超高速船が必要になる。私はそれを運転は出来る。ただ、非常用としては運用されてないから、うまく非常口に連結してる格納庫まで移動しないといけない」
「そんなことが可能なのですか?」
「……可能にするのよ」
成功確率を聞きたかったがあえてやめておいた。そうすると、この計画自体が全くをもっていい加減で不可能な事と考えてしまうから。
「まず、あなたと私がその時間一緒にいなければならない。今回は、あなたを説得する形をとって面会してるけど、次からは簡単にはいかない」
「なるほど、そうですよね、非常時にはいくつも非常扉が閉じるので、その人がいる区間でしか脱出できないですよね」
「そう、一緒にその脱出口の近くにいなければ意味がないわ」
「一緒に居続けても、不振がられますよね。何か理由がなければいけない」と自分は、一緒にいるための色々なシチュエーションを考える。
「方法はあるわ。凄く簡単な」とリラさんはあっさりと言い切る。
簡単を聞いて自分は少し驚き「なんでしょうか、手伝えることがあれば何でもやりますよ」と言った。
「ありがとう、それにはあなたの協力が絶対に必要。本当に何でもするつもり?」
「もちろんです! 自分の命がかかってますか……」
その言葉を終える前に、口は突然塞がれた。話をしながら顔が近いと思っていたが、真剣な話なのでさほど気にしてはいなかった。目と目が触れそうなくらい顔が近い。リラさんは目をつぶっていた。心地良い香りと共に、柔らかい唇の感触が温かく感じる。
リサさんと自分はキスをしていた。
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リラリース技師長のイメージを絵画AIで表現しました。
https://kakuyomu.jp/users/createrT/news/16817330662516784487
この世界の、年齢が全体的に高いので、イメージしやすいように絵を載せました。
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