Episode 137 場所は、芸術棟の二階。


 ――クラブ活動は再開。今日より明日も。一人から始まった写真部だったの。



 私一人だけの世界も、今は人が集まる場所になっていた。


 芸術棟の二階……夏場だけかと思われていた美術部は、アトリエで今も健在。二階の大部屋にはドアがある。その向こう側こそが、美術部の聖地とも言えるアトリエ。


 実は……


 初めて見たの。美術部の部員さん……を名乗る、女の子。でもでも、絵の具で汚れてたり筆なども持っていたりしていたから、間違いはないと思う。そして名前……


 八月と関係があるような感じの。ええっと……葉月はづき。そう、葉月と言っていた。特徴的なのは、綺麗なお肌。絵の具で汚れていたけれど、お肌の色が大半を占めていた。


 何と、裸だったの。


 モデルさん? と思ったのだけど、描く人と言っていた。それに満面な笑みで、


「君はもしかして写真部の人?」と訊かれたので、胸を張って答える。自己紹介も兼ねながら。多分、女の子同士ということもあって、彼女は堂々としたものだった。まさに包み隠さず案内してくれたの、アトリエという室内を。とても広かったから驚きなの。


 それに室温。冬とは思えない快適な温度。


 リラックス効果は抜群。心地よい音楽も。


 ――そして見た。


 観葉植物たちの間にあるキャンバスの絵。人物画。美術の教科書? いやいや図書室で見た西洋絵画のよう……油絵? と思うも、アクリル絵と彼女は答えた。


 描かれている女の子は、とても見覚えのある子。可愛く見える反面、大人びた一面も窺わせる不思議な感覚。この頃から、すでに身籠っていたことも窺えるの。


 ……裸婦。そうとも題することもできる内容だった。そのモデルは、ウメチカさんだった。夏休み期間に描いたと、彼女は言っていた。そして、私学展の作品でもあったから。


そらちゃんも、描いてあげようか」と彼女……星野ほしの葉月さんは付け加えた。




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