Episode 130 貫く想いは、明日への架け橋に。


 ――白銀に輝くペンダントの中心を、私の指先が貫いた。そして解かれた。



 催眠術だけではなく、謎というのか、疑惑も共に。受け入れるのは辛く、怒りよりも悲しみの方が、その何百倍と大きかった。知らないままが、辛くないとさえ思える程……


 目の前にいる戸中となかさんの、初めて見る険しい顔。


そら、逃避するな! ヒーローは最後まで悪と戦うんだ」


 と、マリー姫の怒鳴り声。これまでのことが脳裏を駆け巡る。ヒーローに憧れた時のことも。それを追うように、戸中さんと共にいた時間も。二度とないかけがえのないもの。


 松近さんの手が止まる。その手に握られているナイフは、音を立てて床に落ちた……


 フーッと千歳ちとせの安堵の息も聞こえる程、静かな空気に変わった。


 私は、言葉にする……


「ごめんね、私は寄り添えてなかったんだね、戸中さんの悩みに」


「はあ? 何? 友情ごっこ? 生半可な友情なんて逆に傷つくんだけど。……わからない? あんたがしてた行動。結局は自己満足なの、あんたはヒーローのカッコよさを追求してただけで、私の思いを崩してきてたってこと。そうでなかったら、あんな簡単に受け入れたりしないわよ、マリーっていう奴なんかに。私の心を裏切ったのよ、あんたは」


 フーフーと、戸中さんは息を乱していた。


 彼女の言葉に、私は涙を止められなくなった。すると、間を割ってきた。思い切り頬を叩かれた。千歳に……「何やってんだ、貴様。見失うなよって言っただろ、己の信念って奴を」……痛かった。心に染みる一言だった。こんな時、ヒーローは泣いたりしない。


 スーッと、私の横を通り抜けた。


 そのまま松近さんは、戸中さんの前に立った。


糸子いとこには感謝してる。俺の思いを汲んでドミノを再結成してくれた。再び立ち上がるまで守ってくれて、ずっと俺の傍にいてくれた。……わかってる。糸子がドミノを支えてくれてたこと。でもな、空の思いもわかってやって欲しいんだ」と、さらに続けた……



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