Episode 110 予期せぬ風の流れに惑う?


 ――どうやら、私は誘拐犯になっていたようだ。この男三人から見れば。

 マリー姫を誘拐したという大罪。なら、証言こそが真実を明かす源なの。



 するとマリー姫は、またも伸びをしながら、


「お昼寝してたの。とてもいい場所だから。それに、このお姉ちゃんのことは知らなかったの。今初めて会った。起きたら何か、騒がしい騒がしい……」と、少し不機嫌な様子。


 安眠を邪魔されたのだから無理もないけど、何となく超我儘な感じの子に思えた。さっきまでは敵対していたけれど、この男三人が気の毒のようにも思えてきた。


 でも、それは……

 私が思う第一印象に過ぎない。だから……


「ちょっと、あなたたち、まさかこのまま帰る……ってことないよね? これも何かの縁と思わないのかしら? 自己紹介してくれないかな。そうでないと不法侵入で突き出しちゃうよ、この学園のドミノセキュリティって、私だけじゃなく芋づる式に続いちゃうからさあ」

 と、脅しとも聞こえる台詞だけど、


「お姉ちゃん、面白いね」

 と、マリー姫は燥いだ。そしてクルリと回って、


「ウチは、マリーンゴールデン・アントワーヌ・エリーゼ・エッフェルエンペラー・シャルル・ド・二十七世。この学園にウチの親戚らしき人が居られるという噂の確認も兼ねてね、ここにいる豊臣とよとみ織田おだ徳川とくがわと一緒に探してるの。とある相談があったんだけどね」

 と言った。見た目よりもしっかりとした口調……


 本当に小学生? と思ったそんな矢先だ。少しムッとしたお顔をして、


「お姉ちゃん、もしかしてウチのこと、小学生と思ってる?」と、訊いてきた。


「……あの、そうとしか……」と、無意識にミュートに近い、音声下げになり、


「無礼者! こう見えても十七歳だ、ウチは。近頃は革命派という輩が動いててな、古き良き伝統を悉く乱している。各学園を回ってるのだけど、この学園も、そうかのお……」



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