Episode 080 寒い夜、温かいココアでも。


 ――喧嘩しちゃったけど、やっぱり続行している松近まつちかさんの身辺捜査。



 それが証拠に、彼のお家にお泊り。私だけではなく陸君りっくんも一緒。ちょっぴり泣いちゃったけど、私は貫く自身の信念。愛と勇気、それが人を思いやる気持ち。皆が手を取り合えば、温暖化から地球を救うことができる。何故なら、それこそが正義の力となるから。


 すっかり夜の帳……


 窓の外から視線を感じる。学園からずっと……ずっとだ。カーテンの隙間から、そっと眺めたら、電信柱の陰から、見える白い顔。黒縁の眼鏡、ボブの髪。制服……私と同じ制服だから、女の子。フミフミと、地面を踏んでいる幾度も。確かに、今宵は寒いから。


 コッソリと駆け出した。松近さんを始め、陸君も眠りの中と確信して。


 ここからは、確かに女の子同士のお話だ。


 正面からではなく、背後から声を掛ける。「ヒッ」と短い悲鳴。細い声……振り向いて御対面。ハッとなる、その顔に見覚えが……よりにもよって、どうしてクラスメイト。


「う、卜部うらべさん」と、彼女は私の名字を声にする。と、いうことは、


戸中となかさん、どうしたの? こんな夜遅く、ずっと見てたよね、あのお家……これは立派なストーカー行為ね、呼ぼうかな、警察」と、少しばかり意地悪も。


 すると見る見るうちに、戸中さんはウルウルと、今にも泣きそうになって、


「警察だけはダメ。親に叱られちゃう。どうしたら許してくれる? ……って、どうして卜部さんが松近さんと一緒なの? どんな関係? ねえ、さっきも一緒だったよね?」

 と、急に変貌した。しっかりと私の胸倉を掴み、締め付ける……


 く、苦しい。と声も出ない程、とても強い力。


 このままじゃ死ぬ……と思い、膝で彼女のお腹を蹴った。するとすぐさま、解放された息苦しさ。彼女は蹲る、私に蹴られたお腹を押さえて「痛い痛い」と泣き声になって。


「取り敢えず温かいココアでも飲んで、ちょっと落ち着こうよ。……そしたら話してあげる。どうして私が松近さんと一緒にいたのかを。その代わりあなたにも質問があるの」



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