Episode 079 星降る街角の劇的シーンに。


 ――警戒心は、今のところ取り越し苦労。そのまま続けばいいと思い始めた時だ。


 静寂な街角だからこそ、かえって目立つ気配……


 相手は単独? それとも複数なのか? 多分、無意識にギラリとした眼差しになっていたのだと思う。すぐ横を歩く陸君りっくんは、私の思っていることにアイコンタクトを送っていたけど、前を歩く松近まつちかさんは背中から、まるで私と陸君が見えているような感じで、


「承知の上だ。絶対に振り返るな、二人とも」


 と、風に乗るようなイメージで松近さんは囁いた。私と陸君を制止した。……私は思考する再び。あの声明文に対して。その文章を作成した人物が、どう考えても松近さんをターゲットにしているとしか思えない。本当は、本当はね……女の子のような気がする。


 あくまでこれは直感だけど、


 女の子にしか解らないような感情を感じるの。ある種の癖。声明文でさえも女の子ならではの、飾りのある紙に、キッチリと纏まっている文字のサイズ。だとしたら、銀行強盗も虚偽の可能性だって出てくる。このまま、このまま何も起こらなければいいのだけど。


 との思いが強まる。その気配さえも、


そら君、君が思っている通りなら、事件なんて起きないさ。我らドミノは決して正義なんかではない。依頼があって初めて動くんだ。まあ、今回は特殊な以来だけど、あくまで業務。お金絡みの仕事。ヒーロー気取りも結構だけど、そんな世界じゃないってこと……」

 と、松近さんは背中で答える。


 ……込み上げるモヤモヤ。私が手に入れた、やっとのこと……


「そんなことない! 捻くれてるよ、松近さんは。どうしてそんな後ろ向きなの? 私は皆が手を取り合えば、絶対に平和が訪れると、そうなってるんだよ、正義のヒーローは」


 それこそが『ヒーロー道』

 ちょっぴり目が潤むのを感じた。興奮しすぎたから。


「稚拙極まれりだ。見てみたいものだな、君の思想が何処まで通用するのかを」


 星降る、流れ星。それは今、涙で滲んでいる。松近さんの冷たく感じた言葉に……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る