Episode 062 空なだけに、それはフライトナンバーだ。


 ――試合の模様が映し出されている大画面が、そっと私に囁いたの。



 勝利という言葉。初陣ながらも私は優勢。あのウメチカさんを追い込んでいる。距離は開かれた。私にはわかる。ウメチカさんのキャラ、マジカルエンジェルは遠距離になると不利だということ。私のキャラは飛ぶことができる。遠距離から近距離に転ずる。


 テレポートができるのだ。


 つまりは、瞬間移動なの。それはそれは、このキャラの六十二番目の技なのだ。


 すると次の瞬間だ。


「照準セット! 大気圏突入アタック!」と、ウメチカさんの叫び声が聞こえた。もうその時には、大画面は真っ白になっていた。……消えた? その直後だ、大きな衝撃が襲った。ダメージを受けたらキャラに連動して、操縦席もその衝撃を受けるという仕掛けだった。音速の速さ? 衝撃は後からきた。私のキャラ、白色の戦士は木端微塵……


 驚愕な表情。もうその様な表情しかなかった。


 勝利を確信した次の瞬間で、この様な事態に。


 会場も静まり返ったけれど、急激な拍手喝采。


 それは、ウメチカさんへ向けられた拍手喝采。


 私か駆け出した。操縦性を離れて相手の、つまりウメチカさんのいる操縦席へ近づいてゆく。負けたけど、爽やかな心。その心のまま、お顔を見る、ウメチカさんのお顔……


 パッチリした目が私を見ている。浮かぶ笑顔は自然なもの。


「お強いですね、ウメチカさん。会いたかったです」

 と、自然と声にする言葉。今はもう勝敗よりも、会えたことで満足で胸いっぱい。


 募る想いを察して頂けたのか、ウメチカさんは、


「何だか長話になりそうな感じだから、向こうでお話しない?」と、その言葉に似たような表現で廊下へ。そしてそして自動販売機前の、簡易的な丸いテーブルを囲んだの。


 遥か遠くの存在だったウメチカさんは、この一瞬でグッと、近い存在になったの。



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