Episode 037 スリルな夢は日常の中に潜む。


 ――柵を超えて抜け出した時に、ありふれた日常もスリルな夢へ化けてゆく。



 手を取り合うのは、今は春日はるかさん。


 私を、未だ見ぬ夢の中へと連れて行くの。……緑の世界へ。タイムリープしたかのような景色へと。まるでアスレチックな光景……って、本当にアスレチックだった。


 蜘蛛の巣みたいに、広がる白い網。


 その上を渡る躍る、幼い頃の子供会の時のように。浸る思い出の中から飛び出した、今も楽しき、この先にある希望。人身事故がないようにと、味噌汁も加えた内容。


 それは、ランチメニューの中にもあった。


 広がるブルーシートは、ランチへの誘い。二人きりのランチを見守る……ブルーシートのように広がる青空。その下で繋がる、陸君りっくん椎名しいなのオジサンとの男旅。父と息子の二人きりのプチ旅行なの。その行く先とは、いつかの私と共に行ったマンデーパーク……


 陸君が、叶えたかった夢だそうだ。


 父と、男同士の旅。いつものポーカーフェイスも剥がれて、私に見せた素の表情。多分だけど、私しか知らないような表情なのかもしれない。なら、私だけが知る陸君なの。


 そのことを思いながら、

 今ここにある景色を写真に収める。


そらちゃん、こっちこっち」と、声を掛けられ思わず、パシャッ……撮っちゃったの。


 ダブルピースの笑顔満開な春日さんを。まずは言葉を失うくらいの、或いは頭が真っ白になった感じの……驚きに満ち溢れるというのか、出た言葉が「ちょ、ちょっと……」


「空ちゃん、もしかして風景専門? 初めて人物を撮っちゃった?」


 と、訊ねる春日さん。私は、お顔を熱くしてコクリコクリと頷いた。或いはブンブンと音を立てながら、そんな勢いで。あ、でも……「駅専門だから」と、付け加えた……


「じゃあさ、連れてってあげるよ、とっておきの場所。空ちゃん、きっと気に入ると思うからさ。ほら、あの柵を超えた先。道の駅へ案内してあげるよ」と、春日さんは言う。



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