Episode 025 忘れ得ぬ、この夕映えの情景。


 ……構える一眼レフのカメラ。お部屋の中から、窓から見える景色の撮影。



 昼間とは違う表情のお空。見れば見る程、本当に不思議……

 よく色を変えるの。まるで人の表情のよう。そして私の名前も、そら……


 今、どの様な表情をしているのかな? そんなことを思っていると……聞こえてくる電車の音とか、屋台のラーメン? いい匂いも、グーッと鳴るお腹も。丁度そこに、


「フムフム、いい具合にお腹が鳴ってるな」と、陸君りっくんが入ってきた、お部屋に。何だかお顔が次第に熱くなる。陸君は涼しそうな趣の、浴衣姿? お風呂上りかな?


「空も入ってこいよ。浴衣は用意してるって、脱衣所に。場所はこの部屋を出て左に向かえば真っ直ぐ。見かけによらず露天風呂完備なんだ。きっと気に入るよ、空も」


 ほんのりと石鹸の香り……


 幼き日の頃は、一緒に入ったけど……もうハッキリとわかる女の子と男の子の違い。でもでも寝るときは、同じお部屋。やっぱり兄妹みたいな関係でしかないような。


「うん! 入ってくる」と言って、お部屋を出た。


 歩く廊下。夕陽に誘われるまま、その光はまるで道標のよう。それか、砂漠の中に見えるオアシスなのか? この度の旅は、まるで冒険心を誘われるような二人の旅。


 とあるアニメで見た、男女二人の探検のようでカッコイイ。そう思うと、ワクワクするこの先のことも。この瞬間に、私は電車が好きになれたような気がしたの。不登校だったけど、フリースクールはちゃんと行けている。陸君と二人なら、広がる可能性。


 ……髪。下せば背中辺りまで……


 ありのままの姿が映る、大きな鏡。恥ずかしくも、じっと見てしまう自身の裸体。夕陽が染める、普通では見られない演出も加え。すると、そっと撫でる? 撫でられる髪。


「綺麗な髪ね……」と、背後から声を掛けられ、ビックリして、


「あ、はい、大きな鏡だなあって」と、動揺も動揺。何だかイケナイことをしているようで。クスッと笑う背後の人、おもてなしの人、女将さんかな、「一緒に入ろ」と言った。



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