君と一緒に地獄に行く

獅子堂桜

第1章 第0話 告白

 本当は気づきたくも認めたくもなかった。

 そうすれば憂うことがあったとしても、「これでいいんだ」と満足できた。いや、満足していたのに。

 あの「覚悟」が全てを変えた。天秤に乗せられた錘は決して釣り合うことなく、傾き、バランスを崩して崩壊するはずだった。それだけの重さが確かにその錘にはあった。

 一方通行。

 釣り合うはずのない想い。

 否定していたのは運命でも、環境でもなく自分自身だった。

 それを彼の言葉がそのことを気づかせてくれた。その想いの先に進んでも良いんだと道を指してくれた。その道がどんなに歪だとしても。

 不思議だった。激流のように流れる情熱、高鳴る鼓動、熱に浮かされたようにぼーっとする頭。その全てが初めてで、心地良い。

「好き」なんて想う資格があるのかは今でも分からない。それだけの罪を背負っていることは自覚している。いや、それだけじゃない。生きている間に更なる罪を犯すことだって分かっている。


 けど、止めたくない。

 この感情だけは抑えたくないんだ。




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